キスして抱きしめて

４

眠れなくなって　起き出して

たいして興味も　ない　くせに

よく見るって聞く　深夜番組つけると

あなたがいるような気になって

雑踏にまぎれて消えた言葉達を　ふと思い出して

胸が痛いくらいせつない　苦しい

さびしいから　いますぐに会いに来て

利吉さんを想って眠れなくて起き出している私。

眠れる時に眠っておかないといけないのは、忍者の基本。

だけど、私は、眠れない。

そして、私は、星の輝く月の照らす静かな夜にソッと耳を傾ける。

「夜の音もいいものだよ。」

利吉さんが時折こうして耳を傾けていると言っていた。

利吉さんがもしかしたらどこかで今日も耳を傾けているかもしれない。

そんな風に考えると、なんだか嬉しい。

風の音

風に吹かれて揺れる木々の音

虫の音

そして、時折訪れる永遠に続くような静寂。

それの繰り返し。

利吉さんがどこかでこの音を聞いているかもしれない。

そう想って嬉しいのは、本当。

だけど、

そう想って寂しいのも、本当。

―――――　一緒に聞きたい。

私は、全然強くなんてない。

『もっと傍にいて。』

だけど、そんなことは言葉に出来ない。

『もう少し一緒にいて。』

駄目、そんなのは、私の我侭。

だけど、どうしよう。

利吉さんの傍にいると胸が痛くて切なくて苦しくて・・・

そんな我侭を吐き出してしまいそうになる。

「乱太郎。」

私の好きなあの声で優しく私の名を呼んでくれる。

そして、私の好きなその腕で私を抱きしめてくれる。

あぁ、今利吉さんは、何をしているんだろう。

任務中なのかな。

それとも、もう眠ってる？

私のことを考えていてくれていたら嬉しいな。

寂しくて、

今すぐに会いたくなって、

もう、耳になんの音も入ってこない。

ただ、

想うのは、利吉さんのことばかり。

「利吉さん。」

両膝を抱えて私は、そこにいない人の名を囁いた。

「乱太郎。」

なにも入ってこない私の耳奥で利吉さんの声が聞こえた。

幻聴？

会いたいという想いがここまできたのかな、なんて苦笑していたら、

また、聞こえた。今度は、先刻よりも少し大きな声。

「乱太郎。」

私は、おもわず膝から埋めていた顔を上げた。

続く

乱太郎の不安は、続くよどこまでも、

いい加減止めてやれよ、利吉さん。

次回くらい止めてくれると思う。

一応、最終話だから・・・：苦笑

5(完)

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