消えない想い　４

「あのさ〜。」

「何？」

乱太郎が後にいるしぶ鬼に問いかける。

「頼んだ依頼は終了したんだから好きな処へ行けば。」

「だから俺は此処にいるんだけど。」

しぶ鬼は乱太郎の後ろから抱きつき乱太郎を強く抱き締めた。

「はっきり言って邪魔なんだけど。」

「そんなツレナイこと言うなよ。一人じゃ淋しいだろ。」

「淋しくない。」

「それともきり丸に誤解されたくない。」

「そんなんじゃ・・・」

心を見透かされ乱太郎は言葉に詰まった。

「ハァ〜俺は別に責めてるわけじゃないんだぜ。」『そんな辛そうな顔すんなよ。』

しぶ鬼は乱太郎を自分の方に向かせそっと額に唇を落とした。

「なっなっ////何すんのさ。」

「元気だせよ。」

「私は元気・・だよ。でも・・・・ありがとう。」

しぶ鬼はもう一度抱き締めたい衝動を押さえた。

もう一度抱き締めたら無理やりにでも押さえつけて鳴かせてしまいそうだったから。

まぁその前に乱太郎に殴り飛ばされるだろうが。

乱太郎は口では嫌々と言いながらしぶ鬼と何件かの依頼をこなしていた。

依頼はすべて乱太郎が決めている。

「なぁ乱太郎。」

「なぁに。」

「お前ってやっぱりきり丸に会いに来て欲しいんだな。」

「な・・なんで///」

「だってお前・・・きり丸の勤めてる城周りの地域の依頼しか受けねぇじゃねぇか。」

「うっ。」

「図星だろ。」

しぶ鬼の言葉の攻めに乱太郎は小さく頷いた。

「そこまですんなら会いに行けよ。」

乱太郎は大きく顔を横に振る。

「なんで？」

「駄目なものは駄目なの。」

「喧嘩でもしてんのかぁ。」

「違う。」

「じゃなんでぇ？」

「私からは絶対会いに行けないんだよ。」

「ハァ〜？なんだそれ。」

「しぶ鬼はわからなくていいんだよ。これは私ときり丸の問題なんだから。」

「まぁ別にいいけど。」

しぶ鬼は乱太郎を抱き締める。

いつもしぶ鬼は乱太郎を抱き締めている。

初めは乱太郎もかなり抵抗していたが最近は諦めたようで抱き締められている。

そして必ずしぶ鬼は乱太郎の髪の毛、額、瞼そして頬に唇を落とす。

乱太郎もその行為を許している。でも唇だけには落とさせない。どんなに不意をつかれてもだ。

それは無言でしぶ鬼を拒絶している様でもある。

『私は絶対にあなたのモノにはならない。』

静かな拒絶。

しぶ鬼は理解している。乱太郎は絶対自分には振り向かないことを。

自分が乱太郎のきり丸への想いを忘れさせる事が出来ないことも。

「なんでだろうな・・・。」

乱太郎を只強く抱き締め、今自分の腕の中にいることを実感する毎日。

いつかこの愛しい人が自分から離れていくのは確実。

だからこそしぶ鬼は乱太郎を抱き締める。

「なんでだろうねぇ・・・。」

しぶ鬼の腕を温かいと想う現実ときり丸の腕を思い出してしまう錯覚。

だって乱太郎はきり丸に抱き締められたことが無いのだから。

乱太郎がいくら抱き締めてもきり丸が抱き締め返すことは無かった。

いつも戸惑いの顔を見せるだけ・・・。

しぶ鬼の腕に抱かれながら想うのはきり丸のことばかり。

『私って最低・・・』

自分に罵倒を浴びせても、しぶ鬼の優しい腕を振りほどけない乱太郎。

『きり丸・・・会いに来て・・・そうしたら私があなたを抱き締めるから・・・あなたが私を抱き締めてくれなくても。』

続く

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