きり丸が大事なのは・・・本当。

でも、もう疲れちゃった。

偽りの姿で、偽りの恋愛ごっこ、最近なんだか情緒不安定なんだ。

きり丸の口からは、乱華のことばかり

きり丸の口からは、乱太郎のことばかり

乱華はきり丸の彼女で、乱太郎はきり丸の親友

私はなんでこんなことしてるんだっけ？

気づいて・・・気づかないで・・・　５

「乱太郎。」

「乱太郎。」

「乱太郎!!!」

「え？」

自分を呼ぶ声にやっと気がついた乱太郎は顔をあげた。

乱太郎の目の前には担任である山田伝蔵がいた。

『あぁ〜そういえば今授業中だったっけ・・・。』

最近乱太郎はボ〜ッとしていることが多くなった。

山田に怒られると身構えた乱太郎だが山田は予想に反して乱太郎の頭をポンポンと叩き言った。

「乱太郎。放課後私の部屋に来なさい。」

―――――　放課後

乱太郎が山田の部屋に行くと其処には山本シナ、ユキ、トモミ、シゲそして兵太夫がいた。

戸を開けたまま固まっている乱太郎に山田は静かに声をかけた。

「乱太郎入りなさい。」

乱太郎はゆっくりと歩き兵太夫の隣に腰を下ろした。

「さて乱太郎。話は全部聞いた。まぁ聞く前から知っていたが。」

「「「「「えっ？」」」」」

五人は一斉に山田を見た。山本だけが“ズズゥ〜”とお茶を飲んでいた。

「どうして御存知なんですか。」

ユキの問いに山田はきっぱりと言った。

「どう見てもあの女の子は乱太郎じゃないか。」

「すぐに私だってわかったんですか。」

乱太郎がすごく真剣な目で山田に問うた。

「乱太郎誰にものを言っておる・・・このわ・た・しに向かってぇ。」

山田は一瞬の内に伝子へと変装した。

「「「「「「うげ。」」」」」」

今度は山本も一緒に声をあげた。

「なによ失礼ね。」

「山田先生今日はそんな話じゃ・・・。」

「そうでしたな。」

山本の言葉で一瞬の内に伝子は山田へと戻った。

「乱太郎君ごめんなさいね。」

「「「ごめんなさい。」」」

山本が謝ると三人も頭を下げた。

「この子たちの思いつきでこんな目に合わせてしまって。」

呆然としている乱太郎の横で兵太夫は“ウンウン”と頷いていた。

「乱太郎君はフッた後のことを心配してるんでしょう。」

「はい・・・それと・・」

「きり丸が心配なんだな。」

黙ってしまった乱太郎の代わりに山田が口を開いた。

乱太郎は静かに頷いた。

「大丈夫よ。」

そんな乱太郎に山本がニッコリと微笑んだ。

どうやら脚本がくの一たちの手によって作成されているらしい。

山田の部屋を出て乱太郎は中庭の大きな石に腰を下ろした。

そして脚本の内容に溜息をついた。

「お前も大変だよな。」『今回は俺も大変だよな。』

兵太夫が乱太郎の横に腰を下ろす。

「こんなんで上手くいくと思う？兵ちゃん。」

乱太郎はソッっと兵太夫の肩にもたれかかる。

兵太夫の片方の手は乱太郎の手を握り、もう片方は乱太郎の腰に回された。

「大丈夫・・・とははっきり言えないが。」

「言えないが？」

「効果はあるみたいだぞ。」

兵太夫は目線を真っ直ぐ前に向けていた。

乱太郎が兵太夫の目線を追うと其処にはきり丸が立っていた。

しかもなんか怒ってる。

「本当だ・・・でもなんできり丸ってば怒ってるんだろうね。」

「そうだな。」

兵太夫は苦笑しながらも乱太郎を自分の方により引き寄せた。

脚本１：きり丸の意識を乱太郎に向けさせる。

方法：きり丸の目の前で他の男と仲良くする。

成果：次回報告

続く

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