どうしてこんなことになったんだろう。

きり丸がいけないんだ・・・格好良くなってモテちゃって。

くの一の気を晴らす為にこんなことやらされたんじゃ堪んない・・・本当に。

きり丸気付いてくれないし

誰にもこんな事相談出来ないし

くの一の人（特にあの三人組）に逆らったら後が恐いし

でも―

デモ―

やっぱりバレちゃったら私、きり丸に嫌われるよね？

嫌われて当然のことしてんだもん。バレないうちにフレば良いって言うけど　

本当にきり丸は、私の女装の女の子に興味をもっているのかな。

興味をもっていると思うと胸が苦しいのはなんでだろう。

気づいて・・・気づかないで・・・　３

「あんたさぁ乱華って言うんだろ。」

この姿で会って二回目に、きり丸は乱華の名前の確認をした。

乱華は頬をほんのり紅く染め上げ小さく頷いた。

その様子を見ていた三人組は、本当に楽しそうだった。

「乱太郎なかなか巧いじゃない。」

「あれなら絶対バレないわね。」

「バレませんよ〜。」

「あんた俺と付き合いたいわけ？」

きり丸の言葉にもう乱華の頭の中は焦りまくりである。

乱華が茂みから覗く三人をチラッと横目で見ると　“そうなのよ”と仕草で合図していた。

「どうなんだよ。しゃべれねぇのか。」

怒気を含んだ言葉に乱華は、身を少し縮ませた。でも、負けないっといった風に顔をバッと上げた。

『もう此処まできたらやるしかないんだ。』

強い想いを胸に乱華はきり丸を見た。

その強い意志を含んだ瞳にきり丸は吸い込まれる様な感覚に陥った。

『この瞳どこかで・・・。』

思い出そうとジッと乱華の瞳を見るが思い出せない。

『・・もしかして気付いてくれた？』

しかし、乱華の淡い想いを打ち砕くように、きり丸が言った。

「で。どうなんだ。」

「え？」

「俺は別にいいぜ。その代わりなかなか会えないぜ。」

「え〜！！！！」

乱華はきり丸の言葉を聞いた瞬間に絶叫した。きり丸は耳を抑えている。

「なんなんだよ。会えないぐらいでそんなに驚くことねぇだろ。」

「あ・・御免なさい。」

『ちょっ・・何。付き合うの私。きり丸と？なんで断わってくれないの（泣）』

茂みでは三人が小さくガッツポーズを極めていた。

「何やってんだか。」

その様子を遠くから観察するように見ている人影には、誰も気がつかなかった。

乱太郎は泣きそうになるのを堪えて演戯を続けた。

「本当にいいんですか？」

「俺がいいって言ってんだからいいんだよ。なんだあんた不満なのか。」

「いいえ。ただ信じられなくて。」『本当にもうなんでこうなるのかな。』

乱華は本当に信じられないといった風な表情をしていた。そんな乱華をきり丸は、興味深げに見ていた。

その視線に気がついた乱華は、首を傾げ上目使いで言った。（完全なる無意識の行動）

「何？」

「いや。」『うん。マジで俺好みだ。』

これまで、きり丸は自分の好みの女がいるとは思っていなかった。

だから、どんな女に言い寄られても興味が湧かなかった。

しかし、数日前自分の前に現われた乱華は、まさにピッタリだった。

隣にいて落ち着く雰囲気を出している。きり丸は、自分を包んでくれる空気を乱華から感じ取った。

この雰囲気は誰かに似ているのだが、その時きり丸は気がつかなかった。

このことが後々、きり丸を悩ませることとなる。

「そんじゃ、俺今からバイトだから行くわ。」

きり丸は乱華の肩を“ポンッ”と叩いて去って行った。

一人取り残された乱華の元へ三人組が駆け寄って来る。

「よくやったわ乱太郎。」

「本物の女の子みたいだったわよ。」

「可愛かったです。」

「「「乱太郎？」」」

下を向いたままの乱太郎を三人が覗き込むと乱太郎は目に涙を溜めて呆然としていた。

「「乱太郎・・・。」」

「そんなに女装嫌だったんですか？」

乱太郎の涙を見て三人は、初めてうろたえた。

「次に会った時もうふっちゃおう。」

「そうね。」

「そうしましょうか。」

三人の会話に乱太郎が顔をあげ言った。

「きり丸傷つかない？」

「「「・・・・・・。」」」

三人は顔を見合わせため息をついた。

「そりゃ乱華のことが本気なら傷つくわね。」『傷つけるためにやってんだけどねぇ。』

「どう見てもきり丸は本気っぽかったわね。」『本気になるように仕上げたんですもの。』

「どうせ傷つくなら早い方がいいですよ。」『多分ですけど。』

「私はきり丸を傷つけたくない。」

「騙し通すしかないんじゃない。」

四人の背後から声がした。振り向くとそこには・・・

「兵太夫・・・（泣）」

乱太郎は思わず駆け寄り抱きついた。

「乱太郎に良く似てるとは思ったけど本当に乱太郎だったんだ。」

兵太夫は乱太郎の背中をさすりながら呟いた。

「兵太夫も私が乱太郎ってわからなかった？」

「似てるぐらいには思ったかな。でも雰囲気はそのまんまだな。」

兵太夫はそう言って、くの一の三人を見た。

「どういうことか説明してもらおうか。」

乱太郎が着替えをしている間に、兵太夫は三人からこれまでのあらすじを聞いた。

「よくそんなことが思いつくな。」『女って恐ェ。』

「話を聞いたからには共犯だからね。」

「あぁわかってるさ。乱太郎の手助けでもしてやるよ。」

「兵太夫・・・楽しんでるだろ。」

着替えを終えた乱太郎は　恨めしげに兵太夫を見た。

「最近面白い事なかったからな。」

サラッと言ってのける兵太夫に乱太郎は肩をガックリと落とした。

続く

２

４