キスして抱きしめて

キスして　抱きしめて　「愛してる」って言って

もっと　ギュッと　強く　抱いて　胸が　苦しくなるほどに

あなたの背中に手をまわし　顔　胸に埋めて

この恋を　心に　妬きつけたい

いつも一緒にいられなくて、歳なんて八歳も離れています。

私から見たあの人は、とても素敵で格好良くて大人の人です。

それに比べて私は、まだまだ子供です。

利吉さんは、私に「可愛い」と言ってくれます。

男が男に可愛いなんて言われても・・・なんて最初は、思ってた。

だけど、会って言われるたびに顔に熱が帯びてくるようになって、

なんだか照れくさいけど嬉しい気持ちになっていった。

頭を撫でてくれる大きな手が心地良くて、

私をすっぽりと包み込んでくれる腕、私を受け止めてくれる胸、

それら全てが心地良くて、愛しくて、

『あぁ、私利吉さんが好きなんだぁ。』

そう自覚した時ものすごく寂しかった。

だって、

利吉さんにとって私は、子供できっと弟のような存在・・・

そう思ってた。

利吉さんは、私にだけ優しいわけじゃない。

皆に優しい。

それに、仕事も出来て顔も良い、その上性格まで良いなんて・・・

利吉さんが私を選んでくれるなんて有り得ないと思ってた。

きっと私の想いは、利吉さんを困らせる。

だから、胸のずっと奥に利吉さんへの想いを封じ込めた。

利吉さんへの想いを自覚してそれを封じ込めても、

想いを自覚する前みたいに接することなんて出来なかった。

きっと、

前みたいに抱きつけば利吉さんに頭を撫でてもらえる。

ギュウッてあの腕であの胸に抱きしめてもらえる。

それは、嬉しいのだけれど・・・

そんなことをされると封じ込めた想いが溢れるのは絶対。

だから、前みたいに接することなんて出来ない。

出来ないから、

私は、無意識に利吉さんを避けるようになった。

利吉さんを避けるようになっても利吉さんの態度は、

変わらなかった。相変わらす皆に優しい。

きっと、利吉さんは、皆が弟のように可愛くて、

私のその中の一人に過ぎないんだと思ったら、

ズキンッ・・・って胸が痛くなった。

私がいてもいなくても利吉さんは、なんとも思わない。

そう思うとすごく哀しくて寂しくて、胸が痛くて、

左胸辺りの服を掴んで耐えるように下を向いた。

『普通にしなきゃ・・・』

そう思えば思うほど普通に出来なくて・・・胸が痛い。

「どうした、乱太郎？」

私の好きな少し低めの声が間近に聞こえた。

『普通にしなきゃ。』

「なんでもないです。」

私は、顔を上に向けて笑った・・・つもりだった。

普通に言えたつもりだった。

『ふぇ？』

いきなり利吉さんが私に腕をまわして私を抱きしめた。

私は、驚きよりも嬉しかった。

久しぶりの利吉さんの温もりが心地良かった。

例えその温もりが誰かのだったとしても嬉しかった。

「乱太郎は、私のことが嫌いか？」

ひどく小さな声でそう囁かれ私は、驚愕した。

避けていたのは事実だ。

だけど、嫌いだなんて嫌いだと思われているなんて・・・

そんなのは嫌だ。

「嫌いじゃないです。」

「私を避けていただろう？それに泣いてる。」

利吉さんの私を抱きしめる腕は緩まることはなくて、

私の顔は、利吉さんの胸に埋められていて、

その時の利吉さんの表情を見ることは出来なかった。

嫌いで泣いてるんじゃないのに・・・ていうかなんで私泣いてるの？

「嫌いなら嫌いとはっきり言ってくれ。」

そんな・・・

こんなにも好きで愛しくて堪らないのに・・・。

「嫌いじゃないです。」

こんなにも好きで愛しくて堪らないのに・・・。

「・・・じゃ、好き？」

利吉さんのその言葉がひどく切なくて、

私の封じ込めた想いは、いとも簡単に溢れ出した。

「好きぃ・・・すごく好きだから・・・困ってるんです。」

溢れ出した想いは、言葉と雫となって止まらない。

「なんで？」

利吉さんは、泣きじゃくる私の背中を大好きな手で撫でてくれた。

「だってぇ・・・私の想いは、きっと利吉さんにとって迷惑だから。」

「愛してる。」

「ふぇ？」

利吉の言葉が理解出来なくて私は、顔を上に向けた。

利吉さんの視線と私の視線が重なった。

「愛してる。」

そして、再度利吉さんは、その言葉を口にした。

そして、その口がしだいに私に近づいてきて触れるだけの優しい口付け。

その眸は、ひどく真剣で本気なんだと感じた。

「・・・本当・・・に？」

「あぁ、乱太郎が愛しい。」

いきなりの展開にすごく驚いて、すごく嬉しくて、

私は、利吉さんの背中に手をまわして顔を利吉さんの胸に埋めた。

続く

うぃ～っす。

利乱です・・・利乱なのです。

しかも、乱⇒利っぽいです。

だけど、利⇒乱もにわかに漂っているので利乱なのです。

乱ちゃんは、すごく健気なんです。

そして、利吉さんは、当然ながら強引です。

嫌いだと思われていても乱ちゃんを抱きしめずにはおれなかった程です。

この話は、乱⇒利な感じで進めていきますのでお付き合い下さいな。