色と光

８

僕らは今更　白い鳥じゃない　身を寄せ合う蝙蝠でいい

密やかに空を　じゃれあい泳ぐ　誰をも寄せ付けないままに

感じていたい

流れのままに互いに激しく求め合って、乱太郎が意識を覚醒した時には、目の前に厚い

胸板があった。　乱太郎は、そっとそれに手で触れて顔を身体を摺り寄せる。まだ着物

は乾されたままだ。何も纏っていない身体は、情交の後だというのに綺麗に拭かれてい

た。

鉢屋が乱太郎の中に精を放った後、乱太郎は、意識を手放した。

そんな乱太郎を鉢屋は、優しくそして強く抱きしめた。

「誘っているのか？」

乱太郎の手がピクリと揺れ顔を上げると漆黒の深い眸がその奥に優しさを漂わせながら

笑っていた。

『格好良い。』

それを見て改めて乱太郎は、鉢屋がすごく男前なことに気がついた。

そんな人に、自分は、求められて身体を繋げたかと想うと本当に恥しくて信じられなく

て乱太郎は、口を開けたままポカンと鉢屋に魅入ってしまった。

鉢屋は、反対に乱太郎に魅入っていた。薄く開けられたままの唇、首筋・鎖骨辺り・胸

至る所に残る自分が付けた所有の印そして、まだ情交の虚ろさが残る深緑の眸それら全

てが鉢屋を誘っていた。

―――パチパチパチ

火の粉の音に乱太郎が我に返った。

「は・・・鉢屋先輩。」

「なんだ。」

「先刻のは・・・」

「夜伽・・・情交だな。」

「ですよね・・・どうして・・・」

乱太郎にしてみれば、先刻まで鉢屋の眸には、自分は映っていなくて映っていると知った

時無性に嬉しくて、漆黒の眸から流れる涙を受け止めたくて抱きしめて・・・なんでこん

な状態になっているのか今だわからないでいるのだ。

「愛しいんだ。乱太郎、俺は、初めて人を愛しいと想った。そう感じた瞬間、乱太郎、お

前に触れたくなった。お前が欲しくなった。俺は、お前が愛しい。」

いきなりの告白に乱太郎は、驚きのあまり固まった。情交がどういう行為であるかまでは

知らないが好きな人同士が行うことだということは乱太郎も知識として知っていた。でも、

まさか、鉢屋が自分をそんな風に想っているなんて微塵にも想っていなかったのだ。

「乱太郎。」

そう呼びかける鉢屋の声は、熱を帯びていて乱太郎の背筋をゾクゾクさせた。

「はい。」

頬を赤らませながらも乱太郎の眸は、鉢屋の眸を見つめていた。互いの眸に互いを映し出

していた。

「お前にこういうことをするのは俺だけだ。」

つまりは、他の人と情交を行うなということだ。

「他の奴に触らせるな。」

つまりは、鉢屋だけを受け止めろということだ。

するどい漆黒の深い闇を揺るがしながら鉢屋は、乱太郎の身体に縋るように乱太郎の身体

を抱きしめた。

「鉢屋先輩も・・・私だけですか？」

「俺は、お前しかいらない。」

鉢屋の言葉に乱太郎は、ふんわりと微笑んだ。

「私も、鉢屋先輩だけが欲しいです。」

乱太郎は、鉢屋の身体を抱きしめ返した。

そうして、色は、光に包まれたのだ。

色は、光無くてして有り得ない。様々な波の光が交差して色を生み出すのだ。

終了

終わりました！

結局鉢屋さんは、愛し愛してくれる存在が欲しかったんです。

そして選ばれたのが乱ちゃんなのですよ。

乱ちゃんならきっと鉢屋さんを受け止めきれるはずなのです。

そして、

鉢屋さんは、他の人にはかなり冷たいけど乱ちゃんには優しいのです。

鉢屋さん表面上は、かなり優しそうなんですけどね・・・。

乱ちゃんに好意を持つ輩には、それこそ深い闇の如く追い込んでいきそうです。