闘華乱舞

壱章　−　１０

―――――　ピィー

あの日と同じように雲一つない空には鳶が一匹飛んでいた。

『鍵』の名は『乱華』

『主』の名は『乱太郎』

そして二人は一人と成りて名は『命：みこと』となる。

光に包まれ宙に浮く乱太郎は、薄っすらと目を開けた。

「「命様」」

乱華が乱太郎の中に溶け込んだ瞬間に二人の脳裏にはその名が浮かんでいた。

それは乱太郎が真の主だという証でもある。二人は乱太郎の足元に跪きその名を呼んだ。

乱太郎を包んでいた優しい光も乱太郎の中へと溶け込み乱太郎は地に足をつけた。

「暁、蒼、私の名は乱太郎だ。」

乱太郎は、自分の胸に手をあてる。そこからポワァと温かい光がわずかに漏れる。

「乱華・・・父様、母様。それが皆が愛してくれた名だから。」

揺れる乱太郎の眸の色は、淡い深緑から深い深緑へと変わっていた。

そして緋色の髪も深みを増し炎にひどく映えていた。

壁が崩れ屋根が落ちる。

「乱太郎、行こう。」

暁と蒼は立ち上がり乱太郎の傍に立った。

二人が乱太郎を見つめれば乱太郎の深緑の眸の奥で炎がユラユラと揺れている。

「全て燃やしてしまわないと意味がない。」

感情の無い眸を揺らしながら乱太郎は手をかざした。炎の勢いがそこから激しくなる。

「全て消してしまわないと報われない。」

乱太郎の言葉に暁と蒼は目を合わせコクンと頷きその場から消えた。

壁が崩れ屋根が落ちても乱太郎には当たらない。

鍵を体内に溶け込ませた今乱太郎は自由自在に結界を作り出せた。

「跡形もなく・・・骨までも全てを地に還そう。」

更に炎は勢いを増しそれは攻撃を仕掛けていた連中にも飛び火していた。

誰も逃げられない逃れられない。炎に包まれ全てが還る。

そうしてその場には灰だけが残った。

その灰も月日が流れ今はそこにはない。

それは単なる火事だと・・・その家の家族は全員死んでしまったと・・・世間の人は噂した。

その火事から数日後　―――

とある国の城主が原因不明の変死を遂げた。

壱章完

平成18年10月24日

９