闘華乱舞

壱章　−　１

―――――　バタバタバタ

大きな足音がそれ程大きくない屋敷内に響き渡っていた。

背筋をピンッと伸ばし正座をしている男が閉じていた目をゆっくりと開いた。

その目が開きると同時にその男のいる部屋の戸が勢いよく開いた。

「お生まれになりました！」

その言葉に男は、膝の上に乗せていた手を持ち上げ腕を組んだ。

そして小さく頷き男は、立ち上がった。

それと同時に男の左右に二つの影が現れた。

「お前たちの新しき『主（あるじ）』の誕生だ。」

男の呟きに二つの影は、頭を下げ一瞬にしてその場から消えた。

そして男は、ゆっくりと確実に一歩を踏み出した。

―――――　オギャ~オギャ~

男が部屋に近づくにつれその声は、鮮明に耳に響いた。

耳に響くそれは、一人のものではない。

その理由を男は、知っていた。こうなるべきことを男は、知っていたのだ。

「やはり双子であったか。」

「えぇ。」

緋色の髪をもつ可愛い男の子

黒色の髪をもつ可愛い女の子

泣きじゃくる中、二人の眸が薄っすらと見えた。

男の子の眸は、淡い深緑

女の子の眸は、深い漆黒

父と母の髪も眸も黒である。

だが、父は以前までは緋色の髪に深緑の眸を持っていた。

「この子に全て受け継がれたな。」

「そして、この子は『鍵』となるのですね。」

「あぁ、どう望もうとも足掻こうとも運命の輪廻からは、逃れられん。」

「この子たちに幸多からんことを。」

母は、二人をギュッと抱き締め、父は、木々が覆う庭をジッと見つめた。

穏やかな風が木々の枝を葉を揺らし部屋の中まで入り込む。

「身体に障るな。」

「構いません。」

父が母を気遣い戸を閉めようとするが母は、それを止めた。

「全てがこの子たちを祝福してくれているのです。」

「そう、だな。」

父と母は庭に視線を移し、そして子供たちに視線を戻した。

穏やかな母の温もりの中で二人は、元気に儚く鳴いていた。

続

平成18年5月10日

２