「好きなんです。」

「・・・わりぃな興味ないんだ恋愛にもあんたにも。」

「キィ〜!!!今年に入って何人目よ。アイツ何様のつもりなのかしら。」

ユキが怒り狂う。

「歳を重ねる毎にアイツに告白するくノ一が増えてるのよね。」

トモミが信じられないといった風に首を振る。

「しかも、見事にすべて玉砕ですものね。」

おシゲが苦笑する。

「そうだ♪少し懲らしめるついでにからかいましょうか。」

そう言ってユキは二人に思いついた事を話した。

「面白そうね。」

「いいですね。」

「そうと決まれば作戦開始〜♪」

気づいて・・・気づかないで・・・　１

「乱太郎。」

「何？トモミちゃん。」

疑うことなく乱太郎は名を呼ばれるままトモミに近づいた。

そして、次の瞬間　

―ジャバ〜

音とともに勢い良く乱太郎の上から水が落ちてきた。

「何？どうしたの。」

白々しくユキが出てくる。

「あら〜大変ですぅ〜。」

おシゲも白々しく驚く。

「乱太郎。こっちよ。そのままだと風邪を引くわ。」

乱太郎は三人に連れ去れた。

「乾くまでその服着ててね。」

そう言って手渡された服に乱太郎は驚いた。

「ちょっ・・・こんなの着れないよ。」

「大丈夫よ。ちゃんと乱太郎に合う様になってるから。」

乱太郎は裸のままいるわけにもいかずに、渋々その服を着た。

「あら〜やっぱり似合うわね。」

「本当。じゃ次は薄くお化粧ね。」

「こちらに座ってください。」

乱太郎は三人に押し切られるまま、お化粧までさせられてしまった。

しかも、カツラまでつけられた。乱太郎は抵抗する気も、もはやなくされるがままになっていた。

「乱太郎って眼鏡してなくても見えるの？」

「大体は見えるけど、ぼやけてるよ。」

「じゃ大丈夫ね。」

そして眼鏡さえも取り上げられた。

眼鏡無しの乱太郎を見ての三人の感想―

ユキの場合

『なにこの子眼鏡取ると一段と目が大きいわね。』

トモミの場合

『うわぁ〜睫毛長いわね〜。』

おシゲの場合

『目の色素薄くて綺麗。』

そして三人同時に言った。

「「「乱太郎って男にしとくのもったいないわね。」」」

その言葉に乱太郎は　がっくりと肩を落とした。

『私ってそんなに　男らしくないのかな。』

三人は誉めたつもりなのだが

自分がどんなに中性的がわかっていない乱太郎にとって三人の言葉は、傷つくものでしかなかった。

「ねぇおシゲちゃん。そっちは順調？」

「はい。しんべヱ様に呼び出してもらってますわ。」

「じゃ急がないと。」

三人がこそこそ話してる後で乱太郎はこれから起ころうとしている事など知りもせず

『この格好いつまでしとけばいいんだろう。』

と考えていた。

「さぁ乱太郎行くわよ。」

「えっ？」

乱太郎はわけもわかないまま三人に引っ張られた。

「ちょ・・こんな格好恥ずかしいよ。」

「大丈夫よ。」

「どっから見てもくノ一に見えるって。」

「そんな・・・。」

「それに乱太郎ってわかんないわよ。」

乱太郎が遠くに見つけたのは、きり丸としんべヱ。

ぼやけてても　あの二人はすぐにわかる。

慌てて乱太郎は三人の後ろに隠れた。

「お待たせですぅ。しんべヱ様。」

「ううん。待ってないよ。おシゲちゃん。」

この二人はもはや二人の世界に入っていた。

一方きり丸は、不機嫌極まりない。

「俺は待ったぜ。なんの用だよ。バイトに行くんだからさ。」

「まぁまぁそんなに焦らないでよ。」

ユキがにっこりと笑う。

はっきり言ってその笑いは、きり丸には嫌な感じだった。

「きり丸に女の子紹介してあげる。」

トモミの言葉に、きり丸は瞬時に反論した。

「俺は恋愛には興味ねぇって。」

「「まぁまぁ、この子なんだけど。」」

そう言って　ユキとトモミは乱太郎をきり丸の前に差し出した。

差し出された乱太郎は、もう混乱状態である。

『え？ちょ・・何？？？！！！どゆこと！！！！！』

ユキとトモミを交互に見ながら乱太郎は口をパクパクさせていた。

「いいからあんたは黙ってなさい。」

ユキが小声で乱太郎に言った。もうこうなってしまえば乱太郎は黙っているしかなかった。

顔をきり丸の方に向けると、きり丸はジッとこっちを見ていた。

『こ・・断わるよね？だってきり丸いつも“興味ない”って断わってるし。』

乱太郎は内心焦りながらも、きり丸に向かってとりあえずふんわりと笑った。

その瞬間だ。きり丸が乱太郎に近づき言った。

「あんた名前は？」

「えっ？」

いきなりの質問に乱太郎の頭の中は真っ白。

すかさずユキが思いつきで答えた。

「その子は“乱華”っていうのよ。」

「私たちより一歳下なの。」

「お前らには聞いてねぇよ。」

きり丸がより乱太郎・・・いや乱華に近づいた。

『見事に俺好みの顔だな・・・問題は性格か。』

きり丸がジロジロと乱華の顔を見て言った。

「とりあえず今日、俺これからバイトだから日改めて会おうぜ。」

乱太郎は混乱しながらもユキとトモミに押し切られ顔を縦に振った。

続く

平成14年8月10日

２