慰め

俺が

あいつの

乱太郎の修羅場に立ち会うのは何回目だろう。

数えたことねぇからわかんねぇな。

なんでかわかんねぇけど立ち会ってしまう。。

最初は印象的だったから覚えてるな。

確かあれは卒業間際の時だったか。

乱太郎が震える手で俺の袖を掴んでたっけ。

微かに聞こえるそれとわかる戯言を嘘だと言う様に頭を縦に横に

あいつは

乱太郎は振っていた。

俺がどんなに言ってもその行為を止めてくれなくて

俺の心は痛くて乱太郎の気持ちがすごく痛くて力一杯抱き締めた。

「うぇ・・っく・・」

そしたら嗚咽を漏らしながらその行為を止めてくれた。

そして行為を止める代わりに止めどなくボロボロと涙を溢れ出してた。

「ひっく・・私じゃ駄目なのかな？」

「そんなことは利吉さんに言えよ。」

「だってぇ・・・別れるって言われたら？」

「別れたらいいだろ。」

「無理だよぉ・・・こんなに好きなのに。」

「じゃ許すしかないんじゃないのか。」

俺の言葉に頷いて乱太郎は笑って利吉さんを許してた。

その後も当然の様に乱太郎を傷つけていく利吉さんが信じられなかった。

乱太郎が傷つくたび俺は慰めた。

―――利吉さんの前だと泣けない

―――利吉さんの前だと本心が言えない

―――利吉さんの前だと取り乱すことさえ出来ない

俺はそんな乱太郎が愛しくて愛しくて・・・どうしようもなかった。

なんで乱太郎が好きな相手は俺じゃないんだろう。

なんで乱太郎は利吉さんが好きなんだろう。

あんなに裏切られてるのに。俺ならあんな風に傷つけたりしないのに。

瞳に溢れる涙を舌で舐め取り溜まった涙を吸い取った。

そうすると乱太郎は安心するように俺に身体をあずけてくれる。

この行為は乱太郎による誘いじゃない。

俺が勝手に乱太郎を慰めてるんだ。

俺は慰めだと自分に言い聞かせながら乱太郎を求めた。

本当は自分の腕の中に閉じ込めておきたいという気持ちを押し込めて。

俺が漠然と少し昔のことを思い出していると闇の中から声が聞こえた。

「ごめんね兵ちゃん待たせちゃった？」

「いいや。」

約束などなにもしていないのにこの会話は変かもな。

乱太郎は俺にソッと近寄って俺の肩に額を乗せた。

俺は乱太郎を包み込むように抱き締めた。

「・・・やっぱり最中だった。」

「そうか。」

利吉さんを見つけた時の乱太郎の顔には諦めの色が見えていた。

そして俺に何も言わずただ黙って駆け出した。

残された俺は待つしかないだろ？

だからだろうな。

俺は次の乱太郎の言葉をなんとなくわかっていた。

「私ね・・・笑って別れの言葉を言えたんだよ。」

「あぁ。」

「本当だよ。」

「わかってる・・・わかってるから思う存分泣け。」

俺は嬉しいんだ。

今乱太郎が自分の腕の中にいることが。

乱太郎がすごく傷ついていることはわかってる。

でも嬉しいんだ。

離せなかった手を離した後に俺の処に来てくれた事がどうしようもなく嬉しいんだ。

「ふぇっ・・・うわああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」

俺の言葉で緊張の糸が切れたんだろう。

乱太郎は叫ぶように泣いた・・・俺の胸の中で。

そして思う存分泣けたんだろう。

乱太郎は涙を止め俺に擦り寄ってきた。

俺は乱太郎の涙の跡を残す頬を下から上へと舐めた。

くすぐったいのか乱太郎はクスクス笑いながら微かに身をよじる。

傷ついた乱太郎も可愛いがやっぱり笑った顔の方がいいよな。

「今日も慰めてくれる？」

先刻までの涙で潤んだ瞳が俺を見つめる。

乱太郎は自分が傷ついた後いつも俺を求めてくれる。

だから俺はその傷を癒すように慰める。

俺は乱太郎の白い首筋に唇を落とす。

「はぁ・・んぅ・・」

そこをきつく吸い上げると甘い吐息を聞かせてくれる。

そのまま指で胸の紅い実を強く摘んで押し潰してやるとその吐息は更に激しくなる。

俺はその反応が楽しくていつもここで手を緩める。

触れるか触れないかの距離で固く成っている実に指を擦れさせる。

「兵ちゃ・・んやぁ・・だってそれぇ・・・」

曖昧な感覚に我慢出来ないのか乱太郎は俺の首に腕を回して強く抱きついてくる。

乱太郎のしなやかな背中をソッと指で撫でればいい声で鳴いてくれる。

「んぅ・・・はぁぁ・・あん」

仰け反った喉元にひどく誘われる。

俺は、乱太郎だけでいい。

なぜ、あの人が乱太郎以外を求めるのかが俺には理解出来ない。

乱太郎

お前が

求めてくれるのならば俺は喜んで慰めてあげるよ。

俺は随分も前から

お前を

乱太郎を求めてたんだからさ。

終了

平成15年2月24日