崩壊

私が求めたモノはなんだったのだろう。

ヤスラギ？

ヌクモリ？

それさえも今はもうワカラナイ。

ダッテ

あなたは

私を求めてくれなかったのだから―――

「やぁ・・・だりきちぃ・・ん・・あぁん。」

甘ったるい女の声が私の脳内を侵す。

あぁ

これで何度目だろう。

一度目はなんとか笑って許せた。

―――本当は泣きたかった

二度目はあの人も男だからと許した。

―――本当は裏切られたと思った。

三度目は呆れて・・・何も言えなかった。

―――本当は大声で叫びたかった。

確かに

あなたを求めたのは私で

あなたは私を求めなかった。

ならなぜ付き合うことに同意してくれたの？

私を抱いたのは

同情？

それとも

遊び心？

「じゃ・・・ココは？」

「んぅ〜・・はぁ・・ん。キモチい・・・いぃ。」

情事の戯言が私の胸に問い掛ける。

『もう・・・限界―――潮時でしょう？』

「そうだよね。」

子供の頃から手放したくなかった手を今離します。

これ以上私でない他の人を求めるあなたを見たくないのです。

「乱太郎なんでここに・・・。」

「ハァァ・・ん。りき・・ちきゅうにうごかないでぇ・・」

“なんで？”その言葉に笑いが込み上げてきますよ。

私の存在にも気がつかない程情事に溺れる人がお好みですか？

最初はあんなに嬉しかったはずなのに――――

身体とは裏腹に私の心は冷めていったのです。

だから他の人を求めるのは仕方のないことだと思っていました。

それでも傍にいたかったのは本心です。

でも、もう足元から崩れて往くのを感じるのです。

身体が繋がればツナガル程、心が遠くなるのを感じたのです。

きっとあなたは優しいから私を突き放すことが出来なかったのですね。

「乱太郎ちょっと待てこれは・・・」

もういいんです。

「乱太郎・・・？」

これは最初で最後の私からの口付け。

可笑しいですよね。

求めたのは私のはずなのに――――

今日の今日まで私から口付けしたことがなかったなんて。

「別れましょう・・・さよなら利吉さん。」

「ちょ・・・待て乱太郎。」

「あぁん・・・」

繋がっているのでしょう。

あなたが途中で止められないのは十分知っています。

だから私は待ちません―――往きます。

これからも私は

あなたが

幸せであるよう願っています。

だから私のことは忘れて下さい。

どうか思い出さないで―――

只の

恩師の息子と父の教え子の関係に戻りましょう。

あなたを

私から

開放してあげます。

終了

平成15年1月30日