非日常

一人の女の子が歩いていると数人の男が声をかけてきた。

女の子はそれらを無視して歩き続ける。

男たちは女の子の進路を塞ぐように立ちはだかる。

女の子は身体を横に向けすり抜けようとしたがそれさえも阻止された。

「どいてもらえないでしょうか。」

言っても無駄だということは承知の上で一応女の子は丁寧に言葉を声にした。

やはり男たちはどいてはくれなかった。

温和な女の子がこの状況をどう脱しようかと思案している時だった。

「そこで何をしている・・・ん？乱・・・。」

通りすがりの男が見るに見かねて声をかけてきた。

男はどうやら女の子の知り合いらしい。

名を言いかけてとどまり女の子の肩に手を乗せている男の腕を掴んだ。

「この手を離してもらえないかな。」

男は温和そうな顔をしている。

男たちはいきなり現れた男の言葉など聞く耳持たずと言ったところで女の子から手を離そうとはしない。

男がにっこりと笑った瞬間女の子の肩に手を乗せていた男の口から絶叫が響いた。

男が掴んでいた腕を捻ったのだ。捻られた男は道に転がり腕を押さえて唸っている。

お前には関係ないだろと他の男が男に叫び飛び掛ってきたが男はそれをいとも簡単に避けた。

「関係なくはないさ。」

男はいつものまにか女の子を自分の方へと引き寄せてた。

「んっ・・・」

そしていきなり女の子の唇を自分の唇で塞いだ。

女の子は初め驚いていたが全てを男に任せているようであった。

「私とこの子はこういう関係だからな。」

男たちは永い接吻を見せ付けられ気分がしらけたのだろう何も事を起こさずにその場からいなくなった。

男たちがいなくなって男は自分の胸に抱いている女の子の名を呼んだ。

「乱太郎。一体何をしているんだ？」

そう、その女の子は乱太郎であった。

その姿はそこら辺の女の子よりも可愛く人の目を惹きつけるものがある。

「きり丸のバイトのお手伝いです。」

きり丸が女装の方が客が来ると言って一緒に女装させられたのだ。

売り子のバイトはやはり男よりも女の方が手早くさばける。

考えていたよりも早くバイトが終了し、きり丸は次のバイトへ、乱太郎は先に学園に帰る途中だったのだ。

「あんな奴ら、いつもの乱太郎なら振り切れただろう。」

「だってぇ・・・山田先生が女装した時はおしとやかにねって。」

自分の危機の時でさえ師の教えを守ろうとする乱太郎に男は頭を抱えた。

「臨機応変という言葉があるだろう。」

男は諭すように静かに乱太郎を抱き締め背中をポンポンと叩きながら乱太郎の耳元で囁いた。

「伊作さん。」

「どうした？」

「なんだか・・・私たち注目されているみたいなんですけど・・・。」

あんな騒ぎを起こしていたのだ周りに人がいない方がおかしいだろう。

「うきゃ！」

伊作は乱太郎を抱き上げ一瞬の内にその場から離れた。

伊作は乱太郎を人気の無い場所までつれていき木の下に降ろした。

降ろされた乱太郎の裾ははだけ太股の付け根まで着物が捲れあがっていた。

その場所へ伊作は手を動かした。

「乱太郎裾が・・・。」

伊作の手は捲れた裾を直すというものではなく吸い付くように乱太郎の太股に触れた。

乱太郎の身体がビクッと揺れる。

「伊作さん、もしかして怒ってますか？」

「あぁ、もしかしなくても怒ってるよ。」

伊作は乱太郎の着物を肩まで下げ露になった肩へ唇を寄せた。

「あんな奴らに軽々しく触られて・・・・」

そして、ぺロッと乱太郎の細い肩を舐めた。

「・・・これは消毒。」

「伊作さん。」

「ん？」

「ここも触られた。」

乱太郎は自ら伊作の前に手を差し出した。

伊作はその手を取り指を一本一本丁寧に舐め始めた。

その光景をうっとりと乱太郎は眺めている。

乱太郎の小さな手に這う赤い舌から乱太郎は目を離せないでいた。

そんな乱太郎の様子に伊作はにっこりと笑った。

「いつもと格好が違うからかな。いつもより感じてるね、乱太郎。」

はだけた裾から手を潜り込ませ伊作は乱太郎の小さな主張を下から上へと手で撫で上げた。

「あぁ・・・っん」

乱太郎はおもわず伊作の腕にしがみついた。

「どうして欲しいか言ってごらん。その通りにしてあげるから。」

「ん・・・いたぁ・・ぃ」

伊作は乱太郎の耳元で囁いた後軽く乱太郎の耳を噛んだ。

そのまま首筋を舌で辿り鎖骨の辺りをきつく吸い上げた。

「言えないのなら、このままもう学園に帰ろうか？」

伊作は乱太郎の身体から離れいつもの優しい笑顔で乱太郎を見つめた。

はだけた着物から見える二つの紅い主張が硬くなっているのが遠目でもよくわかる。

解かれていない下帯はすでに先走りの液で濡れている。

―――――ゴクン

伊作はおもわず生唾を飲み込んだ。

乱太郎の手足は力なく投げ出され乱太郎は縋るように伊作を見ている。

「いさ・・・ぁく・・・さん」

「ん？」

伊作に見られているというだけで乱太郎の感情は昂ぶっていた。

「私にいっぱいいっぱい触ってぇ・・・・」

乱太郎の台詞に伊作は微笑み乱太郎に歩み寄った。

「触るだけでいいの？」

乱太郎は伊作の首に腕を廻しすごく小さな声で言葉を紡いだ。

「やっ・・・弄って、舐めて、吸って・・・気持ち良くさせてぇ・・・」

「今日の乱太郎は素直で我侭だな。」

「・・・だってぇ・・・我侭は女の人の特権だって・・・あっん・・・」

どうやらこれも師の教えらしい。

師もこんな風に教えが使われているなどと思わないだろうに。

伊作としては普段から自分には甘えて我侭を言って欲しいなどと思っている。

だが、なかなか乱太郎は甘えてもくれないし我侭も言わない。

でも、最近は以前よりも甘えてくれるようになった。

「乱太郎は、いつだって私に我侭を言ってもいいんだよ。」

伊作は甘く囁きながら乱太郎の身体を露にして溶かしていった。

乱太郎が気がついた時身なりは整えられていた。

身体は温かい伊作に抱き締められている。

化粧は落ちてしまっている。

だが、素のままの乱太郎でも可愛い女の子に見える。

「乱太郎。」

「はい？」

「次に女装する時はもっと可愛くないように女装してくれよ。」

「？」

自分が可愛いと言う自覚が無い乱太郎は首を傾げるばかりである。

「でないと女装するたびに先刻のような消毒をすることになる。」

伊作は乱太郎を背中から抱き締め乱太郎の肩に額を乗せている。

消毒と名をつけて伊作はいつもより好き勝手乱太郎を弄くった。

乱太郎に無理をさせたのを伊作自身よくわかっている。

「じゃ私はやっぱりいつも通りに女装します。」

にっこりと発言する乱太郎は話を続けた。

「私、伊作さんにああいうことされるの好きです。」

「乱太郎・・・。」

「伊作さんだから触って欲しいし、抱き締めて欲しいのだと思います。・・・・」

最後の方の言葉はすごく小さな声で伊作は聞き取るのに必死だった。

「私は、伊作さんが大好きだから。」

その言葉に伊作も応えた。

「私も、乱太郎が大好きだよ。」

二人は視線を合わし、ふんわりと笑った。

男が女の格好をして歩く。

それだけで非日常と言えるだろう。

しかし、それさえも乱太郎と伊作の二人にしてみれば日常となってしまうのであろう。

乱太郎はどんな格好をしていても可愛いんだからいいんだよ。

伊作の呟きが誰にも聞かれることなく空に溶けた。

終了

きたはらさんからのリクエストでした。

エロいのを期待していたのならばごめんなさいです。

肝心のエロ場面をしな〜っと飛ばしてしまいました。

でも、なんだか乱ちゃんってば伊作さんに調教されているような感じです。

永いことお待たせして申し訳ありませんでした。

きたはらさんに喜んでいただけたら幸いです。

リクエストありがとうございました。