愛護欲

先刻までの雨が嘘のように蒼い空が広がっていた。

乱太郎が蒼く突き抜けるような水溜りを覗き込んでいた。

その後姿を発見した男が一人勢いよく突進してきた。

「ら〜んたろうv」

その声に振り向こうとした瞬間乱太郎は、前のめりになった。

―――パシャン

そして、その男の体重を支えられなかった乱太郎は、見事水溜りに倒れこんだ。そして、当然の如く蒼く澄んだ水溜りは、土色になっていた。

「乱太郎、大丈夫か？」

乱太郎を心配するいきなり抱きついた男は、それでも乱太郎を抱きしめたままだ。

「大丈夫なように見えますか、小平太さん？」

小平太の腕の中で乱太郎の身体の前面が、濡れていた。

濡れている乱太郎を抱きしめている小平太にもそれが浸透していた。

「だいぶ濡れてるな。」

「・・・小平太さんまで濡れてしまいます、離して下さい。」

「やだ。」

「やだ・・・って。」

乱太郎は、小平太の腕の中で脱力した。

どれくらい抱きしめられていたのだろうか水溜りは、蒼さを取り戻していた。

「何をしている。」

抵抗する気もなく抱きしめられたままの乱太郎が顔を上げるとそこには、仙蔵が立っていた。

「乱太郎を抱きしめてる。」

小平太が乱太郎の感触を楽しむかの如く頬に頬を摺り寄せた。

「濡れているな、乱太郎。」

小平太の言葉など無視して仙蔵は、乱太郎に話しかけた。

「ちょっと水溜りに突っ込んでしまいまして。」

苦笑する乱太郎と乱太郎を後から抱きしめている小平太を交互に見て仙蔵は、小さく溜息を吐いた。

「小平太、乱太郎を離せ。」

「やだ。」

「は・な・せ。」

仙蔵がかなりの威圧感で小平太を見下ろした。

そして、小平太が渋々抱きしめていた腕を弱めると仙蔵が乱太郎を抱き上げた。

「仙蔵さんまで濡れてしまいますよ。」

心配そうに眸を揺らしながら乱太郎は、仙蔵の顔を覗き込んだ。

「いいさ。ちょうど今から風呂に入るからな。」

一緒に入ろうと微笑む仙蔵に乱太郎は、困惑気味だ。

忍術学園には、各忍たま長屋ごとに風呂がついている。

つまり一緒に入るということは、一年生の乱太郎が六年生が使用している風呂に入るということなのだ。だから、乱太郎は、途惑っていた。

「俺たちも一緒なんだから、問題ないって。」

仙蔵の背中を押し小平太が風呂へと進み出した。

「お前も入るのか？」

仙蔵が切れ長の眸で小平太を睨むと小平太は、ニカァっと笑った。

「当然。」

三人が風呂の脱衣所に着くと見知った顔が上半身裸で立っていた。

「よぉ、お前らも今から風呂か？」

乱太郎がいることを疑問にも思わず乱太郎の湿った髪をわしゃわしゃと撫でた。そして、乱太郎の眸に視線を合わせニィっと笑った。

「珍しいね、文次郎がこの時刻に風呂に入るなんて。」

「それを言うならお前らもだろ。」

「小平太が乱太郎を水溜りに落としたんだ。」

「ほぉ。」

「落としてない・・・抱きついただけだ。」

「しかも、風邪を引くかもしれないのにそのまま抱きしめてたな。」

「仕方ないだろ。乱太郎は抱き心地がすごく良いんだ。」

「それは、知っている。だが、乱太郎が風邪でも引いたらどうする。」

「俺が看病する。」

「余計に悪化するだろうな。」

言い合いを始めた二人を尻目に文次郎は、しなっと仙蔵の腕から乱太郎を奪った。すでに文次郎は、裸である。腰に手拭を巻きもせずに堂々とした態度で乱太郎の方が顔を赤らめてしまう。

「脱がしてやろう。」

「へっ・・・あっちょ・・自分で脱げます。」

乱太郎の言葉を無視して文次郎は、手早く乱太郎の着物を脱がし始めた。

濡れているせいか乱太郎の白い肌に着物が纏わりついている。

文次郎は、それをゆっくりと剥がし乱太郎の白い肌を露にさせていった。

両胸に実る桜色の実がなんともいえず可愛らしい。

服を脱がしながら文次郎は、ついでとばかりにそれを親指の腹で撫でた。

「んっ・・・。」

「どうした、乱太郎？」

「・・・なんでもないです。」

思わず声が出てしまった乱太郎だが、なぜそんな声が出てしまったのかわからないでいた。そんな乱太郎の着物を文次郎は、本当に楽しそうに脱がしていった。仙蔵と小平太は、いまだ言い合っていた。

「・・・ってあれ・・・乱太郎は？」

「ん？・・・しまった。」

二人が気がついた時には、既に遅く乱太郎は、文次郎に連れられて風呂に向った後だった。

文次郎と乱太郎が風呂に入ると先客がいた。

「長次さん。」

そこには、身体を洗っている長次がいたのだ。

文次郎に連れられて入って来た乱太郎をジィ〜っと見つめた後自分の隣りをポンポンと叩いた。どうやらそこに座れと言っているらしい。

言われるがまま長次と向かい合わせになるように座るとザバァ〜と頭からお湯をかけられた。乱太郎の後ろでは、文次郎がさっさと自分の髪と身体を洗っていた。

「い・・・いきなりなんですか。」

眼鏡無しの乱太郎の眸がキョトンとしていた。

長次は、無言のまま乱太郎の頭を洗い始めた。

それが、かなり気持ち良かったのか乱太郎は、大人しく長次に頭を洗ってもらった。赤い髪が湯に濡れて肌に張り付くのが艶めかしい。

最後にワシャワシャと手拭で髪を拭かれた。

「あ・・ありがとうございました。」

髪を拭かれながらフニャと笑う乱太郎がどうしようもないくらい可愛い。

「後を向け。」

乱太郎が首を傾げながら後を向くと文次郎の身体が乱太郎の方に向いていた。手は、泡立っている。

「足を伸ばせ乱太郎。」

文次郎に言われるがまま乱太郎が足を伸ばすとそれに文次郎は、手を這わせた。背中は、長次の泡だらけの手が撫でていた。

どうやら身体を洗ってくれているらしい。

文次郎のごつごつした指が丁寧に乱太郎の足の指の間まで洗っていく。

脹脛を下から上にマッサージするかのように揉み解す。

長次の大きな手が乱太郎の背中を円を描くように動いている。

次第にその手は、乱太郎の胸に腹に移動していく。

「くすぐったい。」

乱太郎が身じろぎながらクスクスと笑う。

文次郎の手が太股を撫で始めた時声がかかった。

「二人だけずるい。」

乱太郎が惚けた顔を上に向けると小平太が仁王立ちしていた。

それでも、文次郎と長次は、手を休めることはなかった。

「って無視かい。」

交代と騒ぐ小平太に仙蔵が一言。

「お前は、乱太郎を濡らしたから駄目。」

そして、仙蔵は有無を言わさず二人から乱太郎を奪った。

「後は、私がする、いいだろ。」

仙蔵の威圧感に二人は、渋々頷いた。

「むぅ〜・・・」

小平太は、頬を膨らませ湯船に浸かった。

「さて、後はどこを洗っていないのかな。」

足・脹脛・太股・腕・背中・胸・腹、乱太郎の身体をジィっと見つめ仙蔵は、洗っていない箇所を見つけた。

「仙蔵さん？」

「ん、乱太郎、ちょっと腰浮かしてくれ。」

仙蔵の肩に顔を乗せながら乱太郎は、言われるがまま腰を浮かした。

「えっ・・・ひゃ・・ん・・」

仙蔵の泡だらけの手が乱太郎の柔らかく弾力のある双山を揉み始めた。

「んぅ・・・あっ・・・」

そして、ツツ〜っと窪みに指を這わせた。

「ここも綺麗にしないとね。」

仙蔵の行動をジッと見つめる三人は、正直ちょいと前かがみになっていた。

仙蔵の肩に顔を乗せた乱太郎は、紅い舌を突き出しながら無自覚に喘ぎ声を口にしている。

―――グリュ

「なぁ・・・んぁ・・」

仙蔵の泡のついた細くて長い指が乱太郎の中に入ってきた。

「この中もちゃんと綺麗にしないとね。」

グリグリと指を動かしながら仙蔵は、ソッと乱太郎の耳元で囁いた。

―――ガラ

「何をしている。」

その声に四人の身体が固まった。

「風呂に入ってるだけだけど。」

見てわからない？と身体を固まらせたままそう口にした仙蔵をさすがというべきだろう。

「伊作さん。」

仙蔵の肩で惚け顔の乱太郎が、嬉しそうにその声の主の名前を呼んだ。

―――ズブ

仙蔵は、乱太郎の中から指を抜き泡だらけの乱太郎の身体にお湯をかけた。

「はい、終了。」

もう？という感じで乱太郎が仙蔵の顔を覗き込む。

「後は、伊作に確認してもらいな。」

乱太郎の濡れた緋色の髪を撫でて仙蔵は、自分も湯を浴びて湯船に向った。

「お前らは、まだいるのか。」

伊作の冷たい眸が四人を捕らえる。

「見るくらいいいだろ。」

「減るもんじゃないしさ。」

「・・・。」

「私は、まだ温もっていない。」

四人の言い分に伊作は、更に冷たく眸を光らせた。

「ふっ・・・まぁいい。後々覚悟しておくことだな。」

「乱太郎。」

伊作は、四人に向けていた眸とは、全く違う優しい眸を乱太郎に向けた。

そして、大きな手で乱太郎の頬を包みこんだ。

「どうして、ここに？」

「小平太さんに抱きつかれて水溜りに飛び込んでしまいました。」

ふんわりと笑う乱太郎に湯気がかかってより艶めかしい。

「仙蔵さんに一緒にお風呂に入ろうって誘われたんです。」

乱太郎の白い肌は、薄っすらと桜色に染まっている。

「文次郎さんと長次さんと仙蔵さんに身体を洗ってもらったんです。」

無邪気な笑顔は、邪な想いになど全然気がついていない証拠だ。

「気持ち良かった？」

「はい。」

あれだけ触られて身体を洗ってもらっただけだという幼さに伊作は、ニッコリと微笑む。その奥では、かなりの苛立ちがあるのだがそれを乱太郎に見せることはない。

「乱太郎。」

「はい？」

「乱太郎の綺麗になった身体で私の身体を洗ってくれないか。」

「私の身体で？」

「あぁ。」

乱太郎は、よくわかっていなかったがつまりは、身体全体で洗って欲しいということなのだろうと納得した。

乱太郎は、再度自分の身体を泡だらけにした。

そして、伊作の背中に自分の胸を寄せて上下に動いた。そして、腕を胸に廻し手で一生懸命伊作の胸や腹を洗った。伊作の引き締まった無駄の無い筋肉に乱太郎は、陶酔していた。

「伊作さんの身体って筋肉が均等についててすごいですね。」

「乱太郎も成長すればこうなるさ。」

「そうかな。」

乱太郎は、伊作の後ろから前側に回った。

そして、自分の太股に泡立てた石鹸をつけた。

伊作は、自分の身体を使って私を洗ってという言葉を忠実に守る乱太郎が愛しくて堪らない。そして、その素直さにひどく不安になる。

きっと乱太郎は、伊作以外に洗ってと言われても素直にこうやって洗うのだろう。伊作は、四人に釘をさすかのように視線を向けた。

しかし、四人は、素知らぬ顔だ。

乱太郎は、自分の太股に伊作の太股を挟みこみ前後に身体を揺すっていた。

乱太郎の頬は、上気しておりどこか表情もトロ〜ンとしていた。

「気持ちが良いの、乱太郎。」

伊作の言葉に乱太郎は、身体を揺らしながらゆっくりと頷いた。

伊作が視線を乱太郎の中心に視線を落とすとそこは、幼いながらに主張していた。それに伊作は、手を伸ばしソッと触れた。

―――プルン

陰毛につつまれていないそれは、可愛らしく揺れた。

乱太郎は、感情の昂ぶりを抑える術を知らないのだろう伊作の首に腕を廻してしがみついた。

「伊作さん・・・どうしよう・・・なんだか変です。」

そんな乱太郎の首筋を舌で撫で上げ伊作は、乱太郎の窪みを指でなでそして侵入させていった。仙蔵によってすでに解されていたそこは、いとも簡単に伊作の指を飲み込んでいく。湯船にいる四人からは、その指の出入りする様が丸見えであった。

―――グリュ・・グチョ・・・

伊作の指が乱太郎の内膜をする音が淫らに浴室に響いていた。

「やぁ・・・ん・・・なぁに・・・伊作さぁ・・ん・・・」

乱太郎は、伊作の指の動きのもどかしさに無意識に腰を揺らしていた。

「乱太郎気持ち良いの？」

乱太郎は、よくわからなかったがコクコクと顔を縦に動かした。

「そう。」

そんな乱太郎に伊作は、微笑んだ。

「なぁ、伊作の奴ヤルつもりなのかね。」：小

「あの様子だと・・・ヤルんじゃねぇの。」：文

「しかし、いい加減熱いな。」：仙

「そうだな。」：長

「あの可愛い口でいいから突っ込みたいな。」：小

「お前下品なうえに馬鹿だろ。」：仙

「そういうことは伊作のいないとこでやらねぇと。」：文

「そういう問題か。」：長

「しかし、後々ばれたら命がないな。」：仙

「そうだろうな。」：文

「伊作ってかなり乱太郎を気に入ってるもんな。」：小

「確かに、可愛い。」：文

「素直だしな。」仙

「護ってやりたくなるよな。」：小

「あぁ。」：長

そんな四人の会話など完全に無視して、というか存在自体を無視して伊作は、行為を進めていた。

しかし、次の瞬間あからさまに伊作の表情は不機嫌になった。

もちろん、乱太郎には、気づかれてはいない。

「ちょ・・おい小平太大丈夫か！」：文

その声の焦り具合に乱太郎と伊作は、四人の方へ視線を向けた。

―――ブクブクブク

乱太郎は、眸を細めてその光景を目にした瞬間そちらに駈け寄った。

「大丈夫ですか！」

なんと小平太が湯の中に沈んでいたのだ。

「のぼせたな。」

ゆっくりと歩み寄ってきた伊作は、小平太を引っ張り上げた。

「小平太さん。」

乱太郎が名前を呼びながらペチペチと頬を叩く。

「お前ら小平太の足に水をかけろ。」

かなり伊作は、不機嫌なのだろう。言葉がかなり荒い。

それもそうだろう。

今の小平太の状況に他の三人もかなり不機嫌になっていた。

「小平太さん、しっかりして下さい。」

今、小平太の頭は、乱太郎の柔らかい膝の上に乗っているのだ。

これは、俗に言う『膝枕』というやつだ。

しかも、裸なのである。

薄っすらと瞼を上げた小平太の眸には、心配そうな乱太郎の顔があった。

「・・・なんだぁ。」

自分に起きた状況を把握していない小平太が辺りを見回すとすぐ傍になにやら小さな物体があった。なんだろうとツンっと触ったら乱太郎が跳ねた。

それと同時に小平太の頭も揺れた。

そして、小平太は、四人によって乱太郎から引き剥がされた。

乱太郎は、自分の股に両手を挟み自分の小さな主張を隠している。

「覚悟は出来ているだろうな。」

伊作のいつもより低い声が風呂場に木霊した。

「へ？」

今だ、小平太は、状況を理解していない。

しゃがみこんでいる乱太郎は、長次に抱き上げられ湯船に運ばれた。

「私たちは、もう出るから伊作とのんびり浸かりなさい。」

乱太郎の頭を撫でながら仙蔵が優しく微笑む。

「おら、小平太行くぞ。」

伊作に睨まれて動けない小平太を文次郎が引っ張り連れて行く。

そして、乱太郎と伊作はいつもように和やかな雰囲気を取り戻しのんびりとお風呂を堪能した。

お風呂から出た後乱太郎は、気がついた。

「私、そういえば着替え持って来てない。」

どうしようと考え込む乱太郎を伊作は、抱き上げた。

「伊作さん？」

「湯冷めしてしまうといけないから私にしっかり掴まりなさい。」

伊作は、乱太郎の身体があまり空気に触れないようにしっかりと抱きしめすぐ近くの自分の部屋に移動した。

「大きいかもしれないがこれを着ておくといい。」

「ありがとうございます。」

それは、本当に大きくて乱太郎は、かなり歩き難そうだ。

伊作は、乱太郎の肌が見えないように簀巻き状態に自分の寝着を乱太郎に着せた。

『あいつらには、釘をさしておかないとな。』

ぶかぶかの寝着に包まれる愛らしい乱太郎に微笑みながら伊作は、あの四人に対する嫌がらせを考えていた。

「伊作さん。」

「ん、どうした乱太郎。」

「伊作さんと一緒にお風呂に入れてとても嬉しかったです。」

また、入ってくれますか？と頬を朱色に染めて問うてくる乱太郎を抱き寄せ伊作は、乱太郎にだけ魅せる表情で微笑んだ。

「あぁ、今度は、二人っきりでな。」

その答えが嬉しかったのだろう。

乱太郎は、照れるように笑って伊作にギュウッと抱きついた。

後日、伊作の嫌がらせと嫌味が四人に降り注いだらしい。

しかしなぜか、仙蔵と文次郎は上手いことそれを交わしていた。

そして、長次はそんなに被害はなく、小平太が一番被害を受けていた。

「なんで俺ばっかなわけ？」

しかし、小平太はめげずに乱太郎を見つけたら乱太郎を抱きしめるのであった。

さてさて、一番良い思いをしたのは一体誰なんででしょう。

終了

むつさんのリクエストでした。

とりあえず謝ります。

だぁ〜なんか微妙な感じで申し訳ないです。

一番の見所は、乱ちゃんが自分身体を使って伊作さんの身体を洗う所だと私は思っているのですが・・・文才がないのでエロさが伝わらない：汗

誰か絵で描いてくれないかなぁ〜・・・なんてね。

泡に包まれた乱ちゃんは、かなり可愛いんでしょう。

それでは、むつさんに喜んでいただければ幸いです。

リクエストありがとうございました。