約束

乱太郎を追ってすぐに教室を出たのにもう乱太郎の姿は見えない。

だけど乱太郎がどこにいるのか兵太夫はちゃんと分かっている。

兵太夫が向かった場所に乱太郎はいて膝を抱え込むように座っていた。

兵太夫は無言で乱太郎の正面にしゃがんで乱太郎の頭を撫でるが乱太郎の手に振り払われてしまう。

暫く静かな時間が流れ、先に口を開いたのは乱太郎だった。

「なんで皆の前であんなこと言ったのさ。」

かなり恥ずかしかったのだろう。乱太郎の体はまだ紅く火照っている。

寒空の下でも乱太郎の衣服に覆われていない部位が熱をもっているのを兵太夫はわかっていた。

それ程までにあの台詞が乱太郎の感情を動かしたのだと思うと兵太夫は嬉しくなる。

「本当に見た夢だったし、それに」

「それに？」

「絶対正夢になるよ。」

「・・・兵太夫。」

「知ってるだろ。僕は乱太郎が好きなんだ。」

「だからって皆の前で言わなくても。」

「やっぱり、ほら。ちゃん皆にわかってもらわないと。」

「何を？」

乱太郎がやっと顔を上げて首を傾げる。ようやく落ち着いてきたのだろう頬の色づきも淡くなっていた。

「僕と乱太郎がそういう仲だっていうこと。」

一気に淡くなっていた色づきがまた濃くなり乱太郎は立ち上がった。

「乱太郎は僕とそういう意味で付き合ってくれてるって僕は思ってるけど、乱太郎は違うのか？」

乱太郎と向き合うように兵太夫も立ち上がる。

兵太夫にしてみればあの台詞は当然のことで、これから現実になることなのだ。

しかし、それを乱太郎が認めてないとなると話は変わってくる。

二人の視線が絡み合い、乱太郎の眸が揺れる。

そして乱太郎はゆっくりと兵太夫に手を伸ばし紅く腫れた頬に手を添えた。

「私、謝らないからね。」

「あぁ。」

乱太郎の冷たい手の感触と言葉に兵太夫は静かに微笑む。

「・・・ずっと一緒にいてくれるって約束、してくれるの？」

そして、兵太夫の頬を撫でながら乱太郎は兵太夫の顔を覗き込む。

「あぁ、約束する。いつかご両親に挨拶に行くよ。乱太郎を貰います、って。」

「下さい、じゃないんだ。」

嬉しそうに笑う乱太郎の手に自分の手を重ねて兵太夫は、乱太郎に顔を近づけた。

唇に唇で一瞬触れてすぐに離れた。

「乱太郎が僕のものだっていうのはもう決定済みだからね。」

「そっか。そうだよね。だけど皆の前で恥ずかしい発言は止めてよ。」

「最善を尽くします。」

「今度は平手じゃなくて、これでいくからね。」

乱太郎は拳を作り兵太夫の目の前に突き出した。

兵太夫は乱太郎の手首を掴んでその拳に唇を寄せた。

―――――　ちゅっ

乱太郎の体はワナワナと震える。

「だ、だ、だからそういうことしないでって言ってるでしょ。」

「いいだろ、今ここに僕たちしかいないんだしさ。」

兵太夫はそのまま乱太郎を自分の方に引き寄せて腰に手を回し抱き締めた。

寒いはずなのに乱太郎の体は火照っていて兵太夫に温かさを与えていた。

「乱太郎ってば、紅くなってる。」

「誰のせいだよ。誰の。」

「僕、かな。」

「『かな』じゃなくて、そうなの。」

二人は授業のことなどすっかり忘れてましたとさ。

当然、二人仲良く山田先生と土井先生からお説教をくらったとか。

終了

平成19年2月15日

えへっv

書いてしまいました。

ちゃんとhareさんの承諾は得てありますので大丈夫です。

しかも、兵太夫と乱ちゃんは付き合っているという設定です。

素直になれない乱ちゃんが可愛くて好きです。

恥ずかしい台詞を平気で口にする兵ちゃんが好きです。

つまりは、兵乱が好きなんです。

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