ツキアウ
乱太郎先輩 今日も可愛いな。入学式の時に２年の乱太郎先輩が怪我した俺を手当てしてくれたのが始まりなんだよな。
乱太郎先輩に近づきたくて保健委員にもなった。乱太郎先輩と親しくなるにつれて憧れは違う想いになった。かれこれ５年も片思い。
可愛くて可愛くて・・・今までに何度も押し・・・いや、告白しようとしたか。その度に邪魔がはいるんだよ。
なんであの人は、いつも乱太郎先輩の傍にいるんだ。特別仲がいいって学園でも噂だ。
あの人以外にも敵はたくさんいるけど俺は諦めない。
一番の問題は、乱太郎先輩が鈍いということだな。鈍いうえにどこか抜けてる。そこがまた可愛いんだよv
前に本人にそう言ったら怒ってたな。怒った顔も可愛かった。
今日は乱太郎先輩と当番の日だ。はっきり言って嬉しいこと限りない。
なんてったって二人っきりだし。（新野先生はお留守）
今日こそは、言うぞ。
「乱太郎先輩？」
「ん？」
「乱太郎先輩って好きな人いないんですか？」
あ〜そんな風に首傾げて見つめないで下さい。
「ん〜、皆好きだけど。」
「そうじゃなくて特別好きな人っていないんですか？」
だから、そんな可愛い仕草しないで下さい。
「・・・いないかな。」
あ〜俺、身長高くてよかった。乱太郎先輩の上目使いが俺を捕らえて離さない。
「本当ですか！じゃ・・・じゃ乱太郎先輩、お・・・俺と付き合ってください。」
俺がそう言って乱太郎先輩を抱きしめようとした瞬間だ。俺の腕は、空をきった。
「は〜い。そこまで。」
くっ、またあんたか。
「きり丸。どうしたの。今日はお迎え早いね。」
しかも、乱太郎先輩は、あいつの腕の中だ。乱太郎先輩どうして、そんな人の腕の中で大人しくしてるんですか。
「きり丸先輩。俺は今乱太郎先輩に大事な話をしてるんです。邪魔しないでくれますか。」
言った・・・今日こそは言ってやったぞ。
「ふ〜ん。」
なんだよその目・・・そんなんじゃ、今日は怯まないぞ。
「乱太郎先輩、付き合ってもらえますか？」
「うん。いいよ。」
えっ・・・俺はその呆気ない返事に、暫し呆然としてしまった。
本当に？嘘じゃない？
俺は再度乱太郎先輩を抱きしめようとした・・・がまたもや邪魔された。
「きり丸先輩も乱太郎先輩の言葉を聞いたでしょう。」
俺は勝ったとばかりに言い切った。
なんだよ。その溜息はさ。
「乱太郎。お前付き合うの意味わかってるのか。」
何言ってんだこの人は。
「当たり前じゃない。こういう事でしょ。」
乱太郎先輩が俺に近づいてくる。俺はもうそれだけでドキドキ心臓破裂寸前だ。乱太郎先輩は俺に近づきドンっと俺を突いた。
何だ？？？？？？？？
そして、ほらほらと言われ俺も乱太郎先輩を突き返した。
何なんだ一体。俺は乱太郎先輩の行動に困惑していた。きり丸先輩は、嫌味ったらしく笑ってるし。
「これが突き合うでしょ。」
乱太郎先輩が満足気に見上げてくる。しかも、満開の笑顔・・・これには否定できないでしょう。
「はい。」
「残念だったな後輩君。」
きり丸先輩腹抱えて笑ってるし。
「なんできり丸笑ってるの？」
「さぁ・・・。」
俺はこう言うしかないよな。しか〜し、今がチャンスだ。俺は後ろから乱太郎先輩を抱きしめた。
「どしたの？」
乱太郎先輩が顔を上にあげて俺を見つめてくれてる。今はそれだけで満足。きり丸先輩の視線が恐いけど。
「乱太郎。もう夕飯の時間だ。」
「えっもうそんな時間なの。ちょっと待っててきり丸。すぐ片付けるから。」
そう言って乱太郎先輩は俺の腕から離れていった。
いつもいつも邪魔ばっかりしやがって。俺はおもいっきりきり丸先輩を睨もうとした。
だが、相手はもう俺を睨んでた。俺は思わず後ずさりしてしまった。くそっ・・・俺は負けねぇ。
「乱太郎。コイツが鍵しめて職員室に持っていってくれるってさ。」
なんだ。俺はそんなこと一言も言ってないぞ。
「本当に。じゃ頼んじゃおうかな。」
そんな笑顔で言われたら断れるわけがないでしょう。
「はい。任せてください。」
そう言って俺は二人を見送った。
「わりぃな。あいつは渡さねぇよ。」
去り際に嫌な言葉をきり丸先輩は残していった。
嫌な感じだ。本当に嫌な感じだ。
乱太郎先輩はお前のモンじゃね〜っつうの。
俺は絶対負けねぇぞ。きり丸先輩にも乱太郎先輩の鈍さにも。
終了
平成14年5月31日