途惑うだけ無駄：左乱
あんまり存在感ないけど一応僕『保健委員』なんだよね。
結構薬調合するのも好きだし、患者を労わることも苦じゃない。
「そういえば、川西先輩保健委員でしたね。」
この言葉結構胸に突き刺さったよ。
あぁ、そうだよ。
僕は、君と同じ保健委員ですよ。
僕なんて眼中にないんだろうね。
君は、いつだって最上級生の善法寺先輩とばかり仲良くしてるもんな。
善法寺先輩も君を異様に可愛がってるしさ。
別に羨ましいわけじゃないんだ。
でも少しくらいは僕の方に意識を向けて欲しい、なんて思うだけさ。
「乱太郎どうした？」
「きり丸が風邪をひいたみたいで。」
ふ〜ん。こいつもなんだかんだといって乱太郎に無条件に心配されるんだよな。完全に仮病じゃないか。
「きり丸を宜しくお願いしますね。」
乱太郎が笑顔でそう言うから、いいよ、ちゃんと面倒みてやろうじゃないか。
一応僕もちゃんとした保健委員だからな。
しかし、同じ保健委員なのに一向に仲良くなれないな。
僕の性分もあるだろうけど絶対三郎次の所為でもあると思うぞ。
乱太郎を見つけるたびに悪態ついてるからな。一緒にいる僕も絶対好印象ではないはずだ。
そんなことは、まぁいいさ。
そういやこいつは風邪だと言っていたな。
「これを飲め。」
僕の煎じた薬は、本当に良く効くんだ。風邪にも腹痛にも歯痛なんかにもな。
乱太郎に優しくされる分僕が手厚く看病してやるよ。だから、乱太郎が来るまで大人しくしてろ。
僕も当番だし、乱太郎が来るまでちゃんといるからな。
「きりちゃん、大丈夫。」
そりゃ、大丈夫だろうよ。小銭に向って突進していけるくらいだからな。
こんな仮病まるわかりの奴を心配しているお前が心配だよ。
「乱太郎の方は、どうだった？」
僕の言葉で僕の方に顔を向ける仕草がこれまた可愛いな。畑仕事でついたであろう頬の土がまた愛らしい。
「それが・・・昔の小銭が出てきて大変でした。」
一瞬だったな。
「・・・学園長にもう渡してるのに。」
あいつの耳には聞こえてないさ。
「川西先輩、ありがとうございました。」
なんだ。僕は当然の事をしただけなのになんでお礼言われるんだ。
固まっている僕に乱太郎は、ふにゃっと笑った。
不意打ちの笑顔はどうもいかんな。なんて言えばいいのかわからなくて頭の中が白くなる。
「きりちゃんを見張っていてくれたんですよね。」
気づいてたのかよ。結構抜け目ないのな。
「きりちゃん、お駄賃貰えないとやる気出さないんです。」
「見てればわかるさ。」
ん？なんだ僕なんか変なこと言ったか。
「いつも見てるんですか？」
なに言ってんだ。どうしたらそういう発想になるんだ。そんな不思議そうな顔して僕を見るな。
嫌でも微妙に目に入るんだよ。
「乱太郎を見てるからな。」
否応無しにあいつは、お前の隣りにいることが多いからな。
「私を？なんで？」
「いつも騒がしいからな。」
「ぶぅ〜、なんですかそれぇ。」
両頬を膨らせた顔も可愛いな。突っつきてぇ。
乱太郎の行動や発言は、唐突過ぎて本人はあまり意識していないのが多い。だから、途惑うだけ無駄なんだ。
「今度一緒に当番になれたらいいですね。」
一年と二年で当番が回ってくるわけないだろ。
そんなんだから三郎次にいつも嫌味言われるんだぞ。
「あぁ、そうだな。」
でも、嬉しいから言わない。もしかしたらそうなる日がくるかもしれないしな。
「私が怪我したり病気になったら川西先輩に看病してもらいたいな。」
だから、どうしてそう言うことをさらりと言うんだ。
「はぁ〜、なんで？」
そんなことは絶対にありえないな。
乱太郎がそんなことになったら絶対学園関係者だけでなく外部の人まで絶対やってくる・・・断言できるぞ。
「静かに休ませてくれそうだからです。」
それは、僕にその騒がしい奴らを処理しろということなのか？
「駄目ですか？」
「・・・いいよ。看病してやるよ。つきっきりでな。」
「ありがとうございます。それじゃ、川西先輩が寝込んだら私が看病しますね。」
嬉しいけどそれは勘弁だな。僕はまだ死にたくない。
もちろんそういう意味じゃないぞ。乱太郎の保健委員の仕事振りは優秀だっていうことぐらいちゃんと知ってる。
「それ・・・」
「もちろんつきっきりです。」
断ろうとした瞬間の乱太郎の言葉に僕は瞬時に頷いてしまった。
そうなった場合一番に聞くのはやはり三郎次の嫌味だと思う。
でもまぁ、そうなったらそうなったで別に三郎次の嫌味なんてどうってことないけどな。
終了
日記：平成16年6月17日
改訂：平成18年12月25日
すっかりと日記でこれを書いたことを忘れてました。
確かその日の忍たまのアニメ見て突発的に書いたものです。
読み直して微妙に付け足してます。
それにしてもよく残っとったなぁ。