吉ｏｒ凶？
あぁなんで女ってベラベラとしゃべるんだろう。
「きり丸、くの一たちが騒いでたぜ。『きり丸には想いをよせてる人がいる』ってさ。とうとう一人にしぼったのか？」
朝から皆五月蝿いんだよ。それになんなんだ。一人にしぼったのか？だって何言ってんだか俺には元から一人だけだ。
五月蝿い問い掛けを俺は無視していった。ふと隣にいる乱太郎に目をやると乱太郎は何か考え事をしているみたいだった。
考えてる事が俺の事だったらいいのに。
一日中
「誰なんだよ、お前の好きな奴って。」
本当にしつこいんだよ。はっきり言って上級生なんかは知ってるくせにからかいにきやがる。
それもからかいはついでなんだ。結局は乱太郎に皆会いに来てんだ。
かぁ〜もう最悪だっつうの。でも、これはまだいい方だったんだ。
次の日からが最悪だった。っていうかかなりキタね。
「乱太郎、次移動だろ。行こうぜ。」
「ごめんきりちゃんちょっと先に行ってて。」
これで何回目だろうか断られるの・・・俺なんかしたか？
微妙に無視されてるよな俺（泣）やっぱあの賭けのせいか？でも、なんで俺に好きな奴がいるってだけで乱太郎が離れていくんだ？
あぁ！！もうわけわかんねぇよ。考えてるだけじゃラチがあかねぇよな。よし乱太郎に直に聞くか。
「なぁ、乱太郎？」
「なぁに、きり丸？」
上目使いに首を傾げているのは無意識なんだろうな。
はっきり言って他の奴らにもこんな仕草してんだからまいるよな。天然だもんな。
「ねぇ、きり丸。用が無いんなら私行くよ？」
うわっ！いけね。思わず自分の世界にはいってた。
「ちょっ・・ちょっと待てよ、乱太郎。」
俺は乱太郎の腕を掴んで振り向かせた。
「この数日間俺の事無視してなかったか？何が原因だ？」
俺の問いに乱太郎は笑って答えたんだ。
「何言ってるのきり丸。私は、別に無視なんてしてないよ。」
笑っているのに・・・俺は乱太郎を抱き寄せた。
「ちょっときり丸離して・・・よ。」
「なぁ乱太郎一体何があったんだ？」
俺はなるたけ優しく問い掛けた。
「何にもないよ。」
「何にも無いのに泣くのか？」
「・・・・・。」
俺たちの間に沈黙が続いた。沈黙を破ったのは乱太郎だった。
「ごめんね。きりちゃん。」
「無視してた事か？」
俺の問い掛けに乱太郎は顔を横に振った。
それじゃ、一体なんで乱太郎は謝っているんだろう？俺には想像もつかない事を乱太郎は話し出した。
「だって私がいつもきりちゃんの傍にいたからきりちゃん好きな人に会いに行けなかったんでしょう？だからごめんね。
私が離れればきりちゃんいつでも好きな人の所に行けると思って、それに名前も教えてくれないって事は私に会わしたくないんでしょう。
それじゃやっぱり私は邪魔だから離れないとって思って・・・でも駄目だね。
久しぶりにこうして話したらやっぱりきりちゃんの傍は落ちつくんだよね。だからごめんね。」
愕然としたね俺は。とりあえず落ちついて考えろよ俺。
つまりはだこういう事か。俺と俺の好きな奴のためを思って俺から離れたが無理だった。
ちゅー事はだ。俺と離れたくないから泣いてるのか！！！離れないとと思ってるのに離れられない事を謝っているのか！！！
うわぁ俺的にはかなりおいしくないかこの展開。いまだに泣いている乱太郎を抱きしめながらかなり俺の顔はにやけていただろう。
しかし、このままではいかん乱太郎を安心させなくては 俺は意を決した。
「乱太郎、俺の好きな奴教えようか？」
俺の言葉に乱太郎が静かに顔を上げた。
「・・・教えてくれるの？」
「あぁ今俺の目の前にいる。」
「・・・目の前？」
乱太郎は目をパチクリさせている。俺はかなりドッキドキだ。
「そう、目の前だ。」
「それって私の事？」
「他に誰かいる？」
俺の目の前には乱太郎しかいない。乱太郎が照れくさそうに笑った。
「そしたら私きりちゃんの傍から離れなくてもいいんだ。」
嬉しい事言ってくれるぜ乱太郎。俺はもう賭けに勝ったと確信した。
「きり丸、私も好きだよ。」
天にも昇る気分だ。最高の日だ。
「本当か？」
俺は確めるためにも聞き直した・・・しかし、これがいけなかった聞き直すんじゃなかったぜ。
次の乱太郎の言葉に俺は衝撃を受けた。
「本当だよ。だって私たち親友でしょう。」
俺の下の地面が崩れていったさ。俺の告白は一体なんだったんだ！
まぁいいさ。俺は前向きな男さ。今回の事で少なからず俺は他の男（女）よりも有利な事には変わりないんだからな。
いつか乱太郎のその想いが友情じゃないく愛情だと気付かせてやる。
俺の気持ちは打ち明けたんだからこれからはどんどん押していくぜ。
覚悟しとけよ乱太郎！
終了
平成13年11月１９日