木の下で
「雷蔵先輩。」
雷蔵を見つけた乱太郎は後ろからいきなり雷蔵に抱き付いた。
「乱太郎君。」
気配を感じていたが、いきなり抱きつかれると思っていなかった雷蔵は、少々驚いた。
だが、乱太郎が無邪気に笑っているから雷蔵も自然に笑顔になる。
「何か用かい？」
「いいえ、姿を見かけたものだから。」
まるで用がないと呼び止めてはいけないように言われて乱太郎は不安になった。
少し淋しげな顔の乱太郎を見て雷蔵は、乱太郎の手を引いた。
「あの木の下にでも座って話そうか。」
「はい！！」
乱太郎は、雷蔵にそう告げられて不安が吹き飛び笑顔満開で答えた。
『可愛いなぁ♪』
そんな乱太郎を見て雷蔵はつくづくそう思った。木の下に着くと雷蔵は自分の股の間に乱太郎を座らせる形で座った。
少しの間ずっと話していた乱太郎が急に静かになった。雷蔵が顔を覗き込むとすやすやと眠っていた。
乱太郎が眠くなるのは当たり前だった。この木の下は、ぽかぽかと暖かく気持ちがいいのだ。
寝顔を見ていた雷蔵が吸い込まれる様に乱太郎の唇に近づいた。もう少しでというところでだ。
「う〜ん。」
乱太郎が寝返りをうった。その瞬間雷蔵はハッとした。
「僕は何を・・・・・・／／／。」
心を落ち着かせ雷蔵は考えた事のない自分の気持ちを考えてみた。
『乱太郎君が気になる。乱太郎君は可愛い。乱太郎君といると楽しい。乱太郎君の笑顔がうれしい。乱太郎君に・・したい。』
考えるまでもなく答えは出ていた。雷蔵は眠っている乱太郎を優しく抱きしめた。
「ふにゃ〜。ごめんなさい。私眠ってしまいました。」
目を覚ました乱太郎は雷蔵の顔を見た。
「僕は、乱太郎君が好きだよ。」
いきなりの言葉にもかかわらず乱太郎はまだ少し眠そうな笑顔で言葉を紡いだ。
「私も大好きですよ。」
その言葉に深い意味は無いと言うことを雷蔵は知っていたがそれでも嬉しかった。
「ありがとう。」
礼の言葉を告げる雷蔵に乱太郎は、首を傾げた。
「変な雷蔵先輩。」
そして、二人は顔を見合わせて笑った。
終了
平成13年1月13日