雨降り
雨がシトシトと降り続いている。
雨の日は、なぜか切なくなる。
「―――ハァ〜・・・」
窓の外に片手を差し出しながら乱太郎は、小さな溜息を吐いた。
降り続く雨にジトジトと気分までもが下降気味である。
乱太郎の気分などお構い無しに暗雲の空からは、シトシト、シトシト止まない雨が落ちてくる。
雨の日は、なぜか心細くなる。
雨の日は・・・
そんなことを考えているとふと背中に温かい体温を感じた。
「うに？」
今、自分は一人で部屋には誰もいなかったのに、と乱太郎は、身体をそのままに顔だけを上に向け視線を後に向かせた。
乱太郎の顔に影が覆う。
「よく降るな。」
そう言って空を見上げている顔がすぐさま乱太郎の方に向いた。乱太郎は『にへら〜』と笑う。
その笑顔をみて兵太夫も笑みを浮かべる。兵太夫は、乱太郎の背中に自分の胸を軽く押し付ける
ように乱太郎を後から抱き締めその場に座った。乱太郎の肩に心地良い重さの兵太夫の顎が乗る。
雨はシトシト、シトシト緑の木々を潤している。
「兵太夫？」
「ん？」
止まない雨を眸で追いながら乱太郎は、自分を抱き締めている兵太夫の名を呼んだ。
「どうしたの？」
「なんとなく・・・」
兵太夫は、一度乱太郎の肩に額を押し付けゆっくりと顔を上げた。
「なんとなく？」
「甘えたい気分なんだよね。」
兵太夫が自分の言葉に『にぃ』と笑うと乱太郎も『ふふっ』と笑った。
雨の音に紛れてシトシト、クスクス静かに響いた。
「ちょうど良かった。」
「何が？」
『くすくす』と笑いながら乱太郎は、後ろにいる兵太夫に身体をあずけるようにもたれかかった。
「私も甘えたい気分だったんだ。」
「そうか。」
乱太郎が自分に廻されている兵太夫の腕をギュウっと抱き締めると兵太夫も乱太郎を抱き締めている腕を強めた。
雨の日は、なぜか切なくなる。
雨の日は、なぜか心細くなる。
雨の日は、誰かに傍にいてもらいたくなる。
だから、
私は、
俺は、
君にあなたに傍にいてもらいたい。
終了
平成16年6月1日