優しさを包み込もう

あいつは一体何がしたいんだろうな。

何気に通りかかった木を見上げるとあいつが

乱太郎が木の枝にぶら下がっていた。

「なにやってんだお前。」

「遊んでるように見えますか。」

ん〜見えんな。

もしかしてぶら下がっとんじゃなくて必死に掴んでるのか。

しかもなんで片手？

「んぅ〜・・・もう駄目。」

「おいちょっと待て・・・っと。」

いきなり手離しやがって。

「・・・いっつぅ。」

「お前なぁ・・・痛いのは俺だ。しかも俺がいなかったら地面に激突だったんだぞ。」

俺は落ちてくる乱太郎を仰向けになり間一髪で受け止めた。

腕にかかる衝撃で多少背中を打ったがまぁこんなのはどうってことない。

それなりに鍛えてるからな。

「ごめんなさい。」

俺の上に乗かったままの乱太郎が弱い声で謝った。

肩を落としてチラッと俺の方を見て視線を逸らす。

「俺がなんで怒ってるのかわかってんのか。」

乱太郎・・・お前わかってないなら謝るなよ。

俺は倒れた上半身を起こした。

そして　顔を横に振る乱太郎の動きを両手で頬を包み込むことによって止めさせた。

「文次郎さん。」

「なんだ。」

「心配かけてごめんなさい。それと・・・」

そこで黙り込むなよ乱太郎。しかもそんな瞳で見つめたまんま・・・襲うぞ。

「それと？」

仕方がないから続き促がしてやるよ。

「・・・助けてくれてありがとうございました。」

「お・・・おぅ。」

照てるような嬉しいようなそんな雰囲気を漂わせての笑顔は本当に心臓に悪いな。

一瞬見惚れちまったじゃねぇか。

俺と乱太郎は向き合うように座っていた。

詳しく説明すると俺の腹に乱太郎が乗ってる。

しかも乱太郎の足は俺の腰に絡まってる。

そうなりゃ自然と俺の腕が乱太郎の腰に絡みつくのは当然の事だろ。

乱太郎の額に俺の額をくっつけてなるべく優しく問うた。

「あんなとこで何やってたんだ？」

俺を見ていた視線を下に向け乱太郎は両手を俺の目線まで上げた。

ぴーぴーぴー

「この子が木の下に落ちてたから。」

あぁ・・・巣に帰そうとしたのか。

俺が木を見上げると乱太郎が捕まっていた枝の先に巣があった。

「危ないとか思わなかったのか。」

「この子を巣に帰すことしか考えてなかったから。」

たくよぉ・・・こいつの優しさはいつか命とりになるんじゃねぇか。

俺は乱太郎を抱きかかえるように立ち上がった。

「文次郎さん？」

不安げな表情を浮かべる乱太郎を強く抱き締め俺は枝伝いに巣の近くまで移動した。

「ほらこれで巣に届くだろ。」

一瞬のことで驚いたのだろう乱太郎は目を強く閉じていた。

ソッと開かれた瞳で交互に俺と巣を見ていた。

「文次郎さんすごい。」

ハァ〜・・・当然だろう。これでも一応俺は優秀なんだ。

当然のことだが言われて嬉しいと思うのは乱太郎に言われたからだな。

「いいから早くそいつを巣に帰してやれ。」

「はい。」

その笑顔はもはや犯罪的だな。

乱太郎は腕を伸ばしそいつを巣に帰した。

もちろん俺の手はちゃんと乱太郎の腰を支えてたぞ。

落ちたら大変だからな。

「それじゃね。もう落ちるんじゃないよ。」

次の瞬間　乱太郎が俺の方に振り向き俺に倒れ込んできた。

「おい。危ねぇだろ。」

まぁ俺が落ちるなんてことないけどな。

乱太郎は無言のまま俺にしがみついている。

「どうした乱太郎。」

「え・・っと思ったよりも高くて。」

お前一応ここまで先刻登ったんだろ。

それだけあいつを巣に帰すことだけに集中してたってことか。

仕方ねぇな。

俺は乱太郎の腕を俺の首に回させた。

「しっかりしがみついとけよ。」

俺の言葉通り乱太郎は強く俺にしがみついてきた。

可愛いじゃねぇか。

木の下に降りても乱太郎はまだ俺にしがみついてる。

俺としては嬉しいがどうしたんだ？

「乱太郎もう地面だぞ。」

そして乱太郎がしがみついたまま顔だけを俺に向けた。

上目使いがなんて愛らしいんだ。

俺は軽く乱太郎の前髪をかき上げた。

「どうした？」

「文次郎さん私。」

「ん？」

「文次郎さんみたいになれるように頑張りますね。」

いやその言葉は嬉しいが俺はそれは違うと思うな。

「俺みたいじゃなくて乱太郎は乱太郎らしい忍者になった方がいいんじゃないか。」

「私らしい？」

「あぁ。」

その優しさや素直さが命とりになることはまずないさ。

俺が乱太郎をまるごと包み込んでやるよ。

「私らしいってよくわからないけど私強くなるよう頑張ります。」

「そうか。」

俺は乱太郎の頭をグシャグシャと撫でた。

「はい。文次郎さんの傍にいたいから足手まといにならないためにも強くなります。」

そうかそうか俺の傍に・・・っておいマジか。

言い終わった後の笑顔がまた犯罪的だった。

終了

むつさんのリクエストでした。

文次郎さんは乱太郎の気持ちなど関係なく傍にいようと決めてたんです。

だから乱太郎の“傍にいたい”発言に少々驚いたんですよ。

あ〜説明せんとわからんような文章ですいません。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

リクエストありがとうございました。