乱太郎中毒症

朝から俺は身体を揺られてる。まだ眠いんだ寝かせろ。

「朝だよ、きり丸・・・きり丸ってば起きてよ。」

朝なのはわかってるんだ・・・でも眠い。

「きりちゃんてば。」

あぅ〜なんか身体が重い。なんなんだよたくよぉ。

俺は薄っすらと目を開けて驚いたね。

「あ〜、やっと起きた。おはよう。」

いきなりの乱太郎アップにおもわず固まったよ。

「今日はどうしたのさ、きり丸寝起きはいい方なのに。」

あぁもう俺の上から退くのか・・・抱き締めようとした腕が寂しく宙を舞った。

「あぁ昨日少し遅かったからな。」

夜中に帰ってきて乱太郎の寝顔に朝方まで魅入ってたなんて言えるか。

「私はきりちゃんの寝顔久しぶりに見れたから嬉しかったけどね。」

いつも乱太郎よりも早く起きて遅くに寝てるからな。

ん？なんか嬉しい発言を乱太郎はしなかったか。

「ふ〜ん乱太郎は俺の寝顔に見惚れてたのか。」

―――ボスン

いきなりの顔面攻撃でも俺の顔のニヤケは止まらないね。

「早く着替えなよね。」

おぉ顔が深紅だ。そういやしんべェがいないな。

「しんべェなら先に食堂に行ってるよ。」

置いて行くよと部屋を出て行こうとする乱太郎を俺は追いかけた。

本当に・・・部屋からでてすぐそれかよ。

どうしてこうしてこう乱太郎は上級生に気に入られてるかね。

しかも、乱太郎も懐いてるしよ。

嬉しそうに話してんのに俺が邪魔出来るわけがないだろ。

「乱太郎君、きり丸君が来たようだよ。」

乱太郎ではなく上級生の方が俺の存在に気づく始末だ。

「じゃ、またね。」

「はい。」

だからさぁ・・・なんで去り際に頬に口付けるわけ？

なんでも南蛮式の挨拶らしいがここは日本だっての。

乱太郎は乱太郎で嬉しそうにそれ受け入れてるしさ。

俺がそんな想いを込めて乱太郎を見つめてもその想いが伝わるわけがない。

「どうしたの、きり丸？」

視線を逸らすわけでもなくただ首を傾げる仕草に本当に参るよ。

只、俺の横だけで笑っていてくれればいいのに・・・まぁそれは俺の我侭か。

乱太郎の笑顔はとにかく人を惹きつける。

当の本人は気がついていないから俺が本当に大変なんだ。

乱太郎にその気がなくても笑顔を向けられた奴らには勘違いしたりするのもいるからな。

この前なんか押し倒されてたんだぜ！

俺が駆けつけた時には乱太郎がその相手を打っ飛ばしていた。

「なんか私よく喧嘩売られるんだよね。」

どうしてこうしてそういう考えにいきつくんだろう。

乱太郎いわく自分が不甲斐ないから他の人に因縁をつけられるだそうだ。

違うだろ。好意をもたれてんだよ。

まぁ俺も面倒くさいから訂正する気もないけどな。

そのまま勘違いしてくれている方が俺にとっては好都合だ。

「きり丸に迷惑がかからないように私強くなるから。」

そう言う乱太郎に俺は深い溜息をつく。

そうでなくても結構力あるし知もあるのにそれ以上になるのかよ。

いつか俺も吹っ飛ばされそうな気がする。

昼休み、乱太郎は時々姿を消す。

まぁ場所はわかってる。

「遅かったねぇ、きりちゃん。」

俺が来るのわかっていたかのような言葉でいつも笑っている。

「そう想うんなら行き場所くらい言っていけ。」

「え〜きりちゃんならどんな場所にいても私のこと見つけてくれるでしょ。」

違う？と微笑まれて俺が否定出来るわけ無いだろ。

「あぁ見つけてやるよ。」

「良かった。それに私もきりちゃんが何処にいても見つけるよ。」

どうして乱太郎は俺を勘違いさせるような言葉を口にするんだろう。

頭の中では違うだろうと否定しているのに心の隅では期待している自分がいる。

俺にとって乱太郎が特別なように俺は乱太郎の特別なのだろうか。

考え込むなんて俺の性格上しんどい。

でも乱太郎のことは別だ。眠れなくて身体をゴロゴロ回転させていたら声がかかった。

「眠れないの？」

ぐっすり眠るしんべェの向こう側から乱太郎が起き上がってくる。

「まぁな。」

俺の顔を覗き込み乱太郎の顔が俺の顔に近づいてきた。

―――チュッ

一瞬の出来事だった。俺の頬にあたる柔らかい感触。

「眠れるようにおまじない。」

そう微笑んで乱太郎は俺の布団に入って来た。

これはもう俺の勘違いは勘違いではないのだろうという確信に変わった。

「乱太郎。」

俺は意を決して乱太郎を抱きしめて顔を覗き込んだ。

まぁ当然のこんなことだろうとは想ってたよ。

俺の腕の中で何事も無かったように寝入っている乱太郎の額に俺は口付けを落とした。

腕の中の乱太郎の体温が心地よくて俺の意識も遠くなっていった。

朝、これまた当然ながら乱太郎はこの出来事を一切覚えていなかったよ。

「あれぇなんで一緒に寝てるの？」

「なんでだろうな。」

俺はもう苦笑するしかないよな。

どんなに乱太郎に振り回されようと乱太郎が可愛くてしょうがない。

これはもう完全に乱太郎中毒症なんだろうな。

この病気にかかっているのはきっと多分俺だけじゃないんだろうけど・・・。

終了

祐さんからのリクエストでした。

乱太郎にはきり丸を振り回しているという意識はないのでしょう。

ていうかこれってきり丸振り回されているのかなぁ：汗

祐さんに楽しんでいただければ幸いなのです。

リクエストありがとうございました。