待ち合わせ

きり丸は学園からちょっと離れた木の下で乱太郎と待ち合わせをしていた。

同じ学園に通っていて同じ部屋なのに待ち合わせ？

そう待ち合わせなのである。

「きりちゃん。明日待ち合わせして何処かに出かけよう。」

そう笑顔で乱太郎に言われれば断わる理由がきり丸にはないのだが一応怪訝な顔をしたりする。

「なんでわざわざ待ち合わせなんだ。」

「深い意味なんてないよ。」

ただなんとなくとふんわりと笑顔で囁かれきり丸は承諾した。

約束の刻は過ぎている。

『なんで来ないんだ乱太郎の奴。』

普段から約束事は必ず守る乱太郎が遅れていることにきり丸は不安を覚える。

―――もしかして上級生に

―――それとも先生の息子さんに

―――いやいや先生か・・・元先生かも

―――事務員ってぇのも考えられる

乱太郎は可愛い顔でよく笑う。

その笑顔はとても柔らかく・・・見ているだけで心が和むのだ。

問題なのは自分・・・きり丸だけの笑顔ではないということだ。

乱太郎の笑顔や仕草そして行動はかなり皆に好かれている。

―――上級生とよく手を繋いで歩いているのを見かけるし

―――先生の息子さんに抱きついている姿も見かける

―――それによく先生に質問しに行ってるみたいだし・・・元先生の家によくお手伝いにも行っている

―――事務員に至ってはいつも怪我の手当をしてあげている

きり丸はそこまで考えて口元を抑えた。

『そういや俺も手繋ぐなぁ。しかも肩に手置いたり腰に手を廻したり抱きついたりしてるよな。

わからない問題はまずは俺に聞いてくるし　俺のバイトの手伝いもしてくれる。

俺が怪我をしようものなら速攻駆けつけてくれて手当してくれる。』

緩む顔の筋肉を抑えることが出来ずきり丸は締りのない顔をする。

―――早く会いたい

―――あの笑顔が見たい

そう考えるきり丸の鼓動は早くなっていった。

―――早く・・・乱太郎に・・・会いたい

きり丸が一瞬目を閉じそれを開けようとした瞬間だ。

「お待たせきりちゃん。」

目の前には焦がれる程会いたかった見たかった乱太郎の満開の笑顔。

「お前おっせぇ〜よ。」

きり丸は目の前の乱太郎を自分の方へ引き寄せ抱き締めた。

きり丸の腕の中で乱太郎が嬉しそうに問いかける。

「ねぇきりちゃん。待ってる間何考えてた？」

「なんでそんなこと聞くんだ。」

きり丸は少し頬を朱色に染め乱太郎の髪に顔を埋めた。

「私のこと考えていてくれたら嬉しいなって想って。」

乱太郎は顔を上にあげきり丸を見つめた。

「私を待っている間きり丸が私のことだけを想ってくれていてくれたらいいなって。」

照れたように笑う乱太郎のなんと可愛いこと。

きり丸は暫し考えた。

なぜ乱太郎が待ち合わせしようと言い出したのか。

なぜ乱太郎が遅れてきたのか。

きり丸はまんまと乱太郎の思惑にはまったのである。

「ねぇ何考えてたの？」

きり丸は乱太郎の瞼に静かに唇を落とし耳元で囁いた。

「乱太郎のことだけを考えてた。」

くすぐったいのか乱太郎は少し身動きしながら本当に嬉しそうに笑った。

「私もね。ここにくるまできり丸のことだけ考えてた。」

そしてきり丸にギュウっと強く抱きついた。

ねぇ

いつもじゃなくていいから

私のことだけ

俺のことだけ

考えて。

頭の中を

私だけに

俺だけに

して。

終了

祭さんからのリクエストでした。

ちゃんとリクに応えられているかどうか心配です。

乱ちゃんは乱ちゃんなりに不安があるのです。

それを表したかったのにどうにもこうにもきり丸の惚気話みたいになってしまった。

きり丸も乱太郎モテルから不安なんだけど結局乱太郎は自分しか見てないって自覚してるから余裕があるんです。

ふに〜・・・後書きで解説するようじゃマダマダですね（反省）

祭さんに楽しんでいただければ幸いです。リクエストありがとうございました。