雨あがりの虹

好きな人に触れたい。

その衝動は、抑えられるものではないけれど躊躇してしまう。

君に触れても、いいですか？

朝から降り続けた雨が小雨になり、もうすぐ止むなという頃に君は僕の前に現れた。

「雷蔵先輩。」

足音で君だとわかっていたけれど、その姿が眸に映ることで更に嬉しさが増す。

「乱太郎君、どうしたの？」

君が僕に会いに来てくれることに理由なんていらないけれど一応聞いてみる。

「急いで下さい。」

その問いに答えてくれず君は僕の手を握った。

触れ合う肌から伝わってくる君の体温に僕がどれだけ胸の鼓動を速めているか、君は知ってる？

「何処に行くの？」

「雷蔵先輩、急いで下さい。」

相変わらず君は、僕の問いに答えてくれないね。

急いでいるんだよね？

もっと速く目的地に辿り着ける方法があるんだけど、いいのかな。

うん。きっといいと思う。

それは君にもっと触れたいという僕の口実なんだけど君が、急いで、って言うから僕は実行に移すよ。

「えっ？っと、雷蔵先輩？」

「この方が速いでしょ。ほら、道案内して。」

「は、はい。」

君に触れる面積が広がって更に僕の胸の鼓動は、速くなる。

君は、道案内に必死でそれには気がつかない。

うん。それは僕にとって好都合だ。

それは、より密着しても大丈夫だということだからね。

「乱太郎君しっかり掴まっててね。」

「はい。」

君は、僕の首に腕を回してギュッと抱きついてきてくれた。

君の頬が仄かに色づいて見えるのが僕の気のせいじゃないと嬉しいね。

君に触れられる喜びに

君に拒まれない喜びに

僕は、いつも酔いしれているんだよ。

好きな人に触れてもらいたい。

その想いは、恥ずかしくて伝えられるものではないけれど願ってしまう。

私に、もっと触れて下さい。

貴方の腕の中で道案内をしている間ずっと私の胸の鼓動は、いつもより速かった。

さりげなく抱き上げられて、触れてもらえて、すごく嬉しいってこと気づかれてないよね？

「此処です、雷蔵先輩。」

本当は、そのままでも良かったんだけど私は貴方と並んで見たかったから貴方の体温から離れた。

まだ少しだけ雨が降っていた。

だけど私たちの到着を待っていたかのように、お日様が顔を覗かせ出した。

「ほら、雷蔵先輩あれ。」

それが現れるのを目の当たりにして私は、嬉しくて貴方の方に振り向いた。

「すっごい綺麗だねぇ。」

貴方の笑顔を見慣れるということがなくて、不意打ちだと更に体温が上昇してしまう。

「乱太郎君？」

貴方の笑顔に見惚れていました、なんて言えなくて私は視線をそこに現れた虹に戻した。

その瞬間に私の肩に温もりが触れた。

そのまま抱き寄せられて私は、貴方の温もりに引き寄せられるように貴方の胸に擦り寄った。

「綺麗、ですね。」

胸の鼓動を抑えることが出来なくて言葉も巧く綴れない。

貴方にとってその行動がなんでもないことでも私にはとても重大なことなんですよ。

貴方の身体から伝わる体温も鼓動も心地良いのに落ち着かない。

「ありがとう、乱太郎君。」

私の方がお礼を告げなければ、と思うのに言葉に出来なかった。

もう虹は消えかけていて、夕焼けが私たちの目の前に広がろうとしていた。

「どうしても雷蔵先輩と見たかったんです。」

それだけは、どうしても伝えたくて貴方を見上げて言葉にした。

「ほら、乱太郎君。もうすぐ陽が沈むよ。」

微笑む貴方の頬が仄かに色づいて見えるのが夕陽のせいだけじゃなければいいのに。

貴方に触れてもらえる喜びに

貴方に微笑んでもらえる喜びに

私は、いつも胸躍らせているんですよ。

終了

平成18年4月13日

ミチルさんに捧げます。

リンクを貼って下さりありがとうございました。

えっと、あの・・・

ちゃんと『恥ずかしいウブな二人』になっているか不安ですが貰って下さい。