「また鏡見てる」
「だって」

「そんなに気になるなら」
「・・・・いや顔じゃないの・・」
「？」
「顔は生まれついてのものだからあきらめるけど」





「じゃあなんだよ」
「・・・私ってちっちゃいねえ・・」





コンプレックス

そんな会話を交わしていたのは本日の保健委員の当番である川西左近と猪名寺乱太郎
乱太郎は保健室に来るたびに鏡を見つめている

それからお仕事に入るのがいつの間にか日課になっていた。



「まあおまえはは組の中でも一番チビだからな」
少し意地の悪い顔でおでこをつついてやると乱太郎はぷくぅーっとふくれっ面をした。
「・・・一番じゃないもん・・・二番だもん・・・」

ちょっと泣きそうな声で訴えるもんだから左近はうろたえた

「あーわるかったわるかったよごめん」
「・・・・・フンどうせ私はチビですよー」



ふいっと乱太郎はそっぽをむいて常備薬の在庫チェックを始めた。




（左近は私と１年しか違わないのになんでこんなに身長に差があるんだろう・・）





髪の質もそうだが乱太郎は自分の身長もコンプレックスのひとつだった。




は組の中ではしんべヱが一番小さくて

順位からいうと乱太郎が二番目


一番も二番もたいして変わりないと思う



しんべヱを除けばは組で一番小さいのは乱太郎ということになる




「・・・はあ〜〜〜」



大きなため息に左近は先ほどの事もあり少しびくついた

「なんだよ」
「ごめん」
「・・・・・・・いつも以上に気にしてるな・・・何かあったのか？」
「・・・・・・・・・・・」
乱太郎はぎろりと左近を睨んだ。
いつもの柔らかい感じの乱太郎ではなく別人に見えた
「ひいいっごめんなさい！！でしゃばりすぎました」
迫力負けして左近は頭を下げた。
「・・・・・はあ〜〜〜〜〜〜〜」
先程よりも長いため息に左近はへなへなと気が抜ける感覚を覚えた・・・
「だから何があったんだ？」

頭をがしっと掴み顔だけを自分の方に向けるとぐきっと妙な音が響いた
「・・・・・っっっ」

気がつけば左近は痛烈な蹴りをくらって伸びている
「乱太郎・・・それは反則・・・・」


「こっちだって首痛めたじゃん・・」
「馬鹿！！男にとって一番辛いところを狙いやがって・・・！！」
「・・・ごめん急所を狙うのは猪名寺家のセオリーなので」
「何がセオリーだ！！あっそんなことより・・・お前何悩んでるんだ？」



「・・・けんさ・・」
「へえ？」
「身体検査があるんだよ！！もうすぐ」
「ああ、そんなことか〜」
「そんなことじゃないよ馬鹿！！！」
「お前さっきから俺のこと先輩だって忘れてるだろ」









また鏡のほうを見てしまった乱太郎に気づき左近はしょうがないなと言う顔をして鏡のほうに向かう

「・・・・・」
「何するのさ」
「もう鏡を見るのは禁止だよ」



立ててあった鏡を裏返して左近は使用禁止の張り紙を貼った


「最悪・・・」
「何が？」
「それトイレの使用禁止の紙じゃん・・」

「そんなことはいいんだとにかくこれからは保健委員の仕事の時は鏡を見ないこと」
「ええ〜〜〜」
「ええ〜〜じゃない」
「はーい」
「よろしい」


乱太郎はまた先ほどのふくれっ面をしてふいっとそっぽをむいて再び常備薬の在庫チェック



「・・・それから、先輩としてアドバイスするけど」
「・・・・・」

「身長なんて個人差なんだから気にするなよ」
「・・・・・」
「もし誰かがおまえをからかうようなこと言ったら、保健委員としての立場を利用して忠告してやるから」
「・・・・・・・」



「じゃあ俺は便所紙のチェックでもしに行ってくるよ」
「・・・・・・・」




左近が出て行った後乱太郎は自分の胸がすっとしている感覚を覚えた。




「・・・・ありがとう先輩」

終了

まりもさんに『夏のボーナス』として頂きました。

むちゃくちゃ嬉しい左近＆乱太郎コンビですよぉ♪

実は、私このコンビが密かに好物だったりします。

先輩なのに乱ちゃんにタメグチで話されてる左近が可愛いです。

躊躇なく急所を狙う乱ちゃんに拍手ですよぉ。

最終的には、ちゃんと左近は後輩の乱ちゃんを可愛がっていて

乱ちゃんは左近を先輩として見ているんだなぁ・・・って

乱ちゃんは三郎次には、ちゃんと敬語で話してそうだな。

くわぁ〜！！！本当に最高でした。

本当に素敵な文をありがとうございました。