たまご

花火大会の張り紙を前ににらみ合いを続ける少年が二人。

「俺が乱太郎を誘うから兵太夫は他のやつといけよ。」
「はぁ？それは僕の台詞だっての。団蔵こそ馬とでもいきゃいいじゃん。」

火花でも散りそうな勢いの二人だが、痺れを切らしたように同時に駆け出した。

「「お前には負けない！」」

叫びつつ・・・。

一方、当の乱太郎はといえば忍たま長屋の縁側でのんびり日向ぼっこ。

「はぁー。今日もいーい天気。」

そのまま寝てしまうんではないかと思われるほど、まったりとした様子。

そこに突如砂埃とともに駆け込んできた人影二つ。

「「乱太郎、俺(僕)と花火大会行こう！」」

あまりの勢いに、乱太郎はぽかんとしている。

「しつこいぞ兵太夫。」
「そりゃおまえだろうが、団蔵。」

また始まった・・・。

二人の喧嘩に我を取り戻した乱太郎はというと、
「はぁ〜・・・。」
ため息を一つ。
（また始まっちゃったよ・・・。）

「ちょっと、二人ともやめなって。」

「このからくり馬鹿！！」
「このウマ馬鹿！！」

乱太郎の制止も耳に届いてはいないらしい。
乱太郎ちょこっと頭に来ちゃったらしく、なんだか怖いオーラが漂っている。

「いい加減にしないと殴るよ！」

雷が、落ちた・・・。

「「ご、ごめんなさい。」」
しゅんっと縮こまっている二人を前に、
「まったく、いつもは仲がいいのになんだってこう毎回毎回。」
頭を抱える乱太郎。

「「だ、だって、乱太郎と二人で行きたかったんだ。」」

ぐっ、とこぶしを握り締めて力説する二人に、
「んーまあ、そんなとこだろうとは思ってた。」
さっきまでの怒りムードはどこへやら。ほんのり困ったような笑顔を浮かべた乱太郎が二人に笑いかける。

「「じゃ、じゃあ、どっちを選ぶ？」」
「もちろん俺だよな？乱太郎。」
「いーや、僕だよねぇ。乱太郎？」

必死ですって顔に書いて覗き込んでくる二人に、満面の笑みを向けて。
「もちろん、いつもどおり３人でっ。」

二人はがっくり肩を落とし、
「またかー。」
「進歩ないねぇ、僕たちも。」

「「でも、ま、いっか。」」

「いいでしょ♪」
にこにこ笑う乱太郎を前に、仕方ないよねと苦笑い。

花火大会の日は三人で。
からかいあったり、笑いあったり、ちょこっと小競り合いしたり。

この関係がいつまで続くかなんてわからないけれど。
いつかは自分だけを選んで欲しいとは、二人とも思っているけれど。
今はこのままでいいかなって思ってみたりもする。

乱太郎が望む限りは、このままだけど。
乱太郎がどちらを選ぶかなんて、どちらかを選んでくれるかなんてわからないけど。
今は今で、心地よいかなって思ってみたりもする。

まだまだ僕らはたまご。
そんな僕らの恋愛は、やっぱりたまごなんだろうか。
ならば、今しばらくこの巣のなかで。
じっくりあったまって育っていこう。

終了

＊むつさんのお言葉＊

遅くなりましたが、暑中お見舞いのお返し、

及び、残暑お見舞い申し上げます。

えぇっと、

リクエストのポイントは押さえたつもりなんですが、どうですか？
とりあえず、乱ちゃん最強なかんじにしてみました。

気に入っていただければよいのですが。

＊千の感涙の言葉＊

むつさんから頂きました♪

私の我侭なリクに見事に応えて下さって本当に嬉しい限りです。

むつさんの書かれる格好良くて男前な乱ちゃんすごく好きなんです。

兵ちゃんと団ちゃんは、なんだか可愛いかったです。

兵ちゃんに「馬と行け」と言われた団ちゃんにちょっと笑いが込み上げてきました。馬と花火大会・・・絶対馬は、花火の音に驚いて暴れると思うんですね。あぁ・・・でも訓練されているというか調教されている馬なら大丈夫なんかなぁ？

乱ちゃんは、兵ちゃんも団ちゃんもどっちも大事でどっちかなんて選べないんだろうな。

忍たまは、まだまだ恋愛に関してもタマゴなんですよね。

いつかは、殻を破って皆誰かを想うのでしょう。

乱ちゃんは、一体誰を想うんだろう。

むつさん、本当にありがとうございました。