大人だから

　　昼下がり。

　「ん・・・、いい天気だ」

　　半助は暖かな日差しに思わず目を細めて伸びをする。

　　どこか眠気を誘う空気に、片手に本を持って読書に良さそうな場所を探す。

　　のんびりと歩いていると、慣れた気配。

　「お、乱太郎か？」

　　見れば、背の高い草達に隠れた木の下に寄りかかって眠っている愛しい子の姿。

　　幸せそうな寝顔に思わず顔がほころぶ。

　　吹き始めた風は冷たく感じられたけれど、起こすのははばかられて。

　　半助はそっと起こさないように、腕の中に抱きとめる。

　　乱太郎は、動きを制限されたのが分かったのか、ほんの少し眉をひそめて。

　「や・・・きりちゃ・・・はなして・ぇ・・」

　　ぴた

　　思わず半助の動きも止まる。

　　―――きり丸？

　　すやすやと眠り続ける乱太郎を起こそうと、頬に手を当てて。

　「あつ・・・・まつださ・・・やぁ・・・ん」

　　ぴき

　　一体どんな夢を見ているのか。

　　嫌と言っているのにその表情はにこやかで、嬉しそうで。

　　―――私は出てこないのか！？

　　どこか的外れな思いを抱く半助に、乱太郎からとどめの一言。

　「りきちさ・・・むりぃ・・・んなお・・・きいの・・・」

　　ぷつん

　　何の音？

　　半助さんが切れた音ー。

　　まだ眠っている乱太郎の顎をすくうと、迷うことなくその唇を激しくむさぼる。

　「ん・・・？は、あ・・・ふぅ・・・っ」

　　半覚醒のまま、引きずられるように溺れていく乱太郎。

　　ようやく止んだ時には、息も絶え絶えで。

　　半助は乱太郎を抱きかかえたまま走る。

　　目指すは、自分の部屋。

　　ぴしゃん、と戸の閉まる音でようやく我に帰った乱太郎はおそるおそる上を見上げる。

　　そこには常とは違った笑みを浮かべる恋人。

　「は、半助さん、なんか怒ってる？」

　　にっこり

　　極上の笑顔。

　　しかし、どこか怖い。

　　蛇ににらまれたカエル状態の乱太郎に、半助はにこやかに。けれどどこか怒っているよう　
　に。

　「私は乱太郎の何かな？」

　「何・・・って？担任の先生で・・・んんっ」

　　言葉を遮って再び激しく口づけられる。

　「私は乱太郎の何？」

　「は・・・ぁ、大切な人です・・・」

　　にっこり

　　再び笑顔。

　「大切って何番目に？きり丸と小松田君と利吉君の次にかい？」

　「へ・・・」

　　どこかすねたような半助の言葉に、思わず目を見張って。

　　息が整ってきた乱太郎は一言。

　「どうして？」

　　どうしてそんな事を聞くの？

　「夢を見ていただろう？三人は出てきたのに私が出てこないんじゃ、乱太郎にとって私はその
　程度なんだろう？」

　　完全にすねている半助。夢・・・と考え込む乱太郎。

　「あ」

　「思い出したか？」

　　子供のような半助に、くすくすと笑って。

　「わたしは半助さんが出てこなくてよかったけれど」

　「どうして」

　「だって・・・」

　　ごにょごにょと耳元で夢の内容を囁く。

　　少しずつ明るくなっていく半助の顔。

　「確かに、出てこなくてよかったな」

　「でしょ？」

　　二人で笑いあって。

　「でも、半助さんがそんなふうにやきもち焼くなんて思わなかった。半助さん、大人だから」

　「大人だから、だよ」

　　いつこの子が腕の中からいなくなってしまうかわからないから。

　　小さなことでも不安になるから。

　「でも嬉しかった」

　　えへへ、と照れ笑いをする乱太郎に触れるだけの口付け。

　　二人で視線をあわせて・・・笑顔。

　「半助さんは世界で一番好き」

　「乱太郎はこの世で一番大切」

　　だから、そばにいてね。

　　ＥＮＤ

　　〜貴夜しのさんのお言葉〜

　　なんだかギャグチック・・・。

　　やきもち・・・焼いているのかなぁ。

　　ちなみに、乱太郎の夢は。

　　「きり丸に羽交い絞めにされて、

　　小松田さんにほっぺたに肉まんをくっつけられて、

　　利吉さんにおでんのちくわ（特大）を食べさせられる」

　　というのを考えてはみたのですが。あまりにも飛びすぎているので却下となりました。

　　２０００番リクをしてくださったモーントリヒト様へ。

　　〜私（リヒト）のお礼の言葉〜

　　私の我侭なリクエストにお応えいただきありがとうございました。

　　乱ちゃんをお持ち帰りしてしまう程の半助さんのヤキモチっぷりが最高でした。

　　乱ちゃんの夢・・・半助さんだったらちくわでノックダウンですね（笑）

　　ふふ本当に読んでて顔にやけましたぁ☆

　　ラブラブはいいよねぇ（しみじみ）